バリオニクス Baryonyx
名前の由来
重々しい爪
科名
スピノサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、獣脚類
生息地(発見地)
イギリス
時代
約1億2500万~9400万年前(白亜紀前期~白亜紀中期)
全長
約8〜10m
体重
約1.5~5.5トン
食性
肉食
Jurassic
Park / World シリーズ登場恐竜
ジュラシック・パーク における活躍
生体として劇中に登場することはありませんでした。
しかし、パークで展示・飼育されている恐竜の1頭として設定上は存在していました。
劇中では直接描かれませんでしたが、パークの地図や資料にはバリオニクス専用のパドックが設けられており、その場所を示す標識(シンボル)には頭骨がデザインされていたことが確認されています。ジュラシック・パークIII における活躍
残念ながら生体としての姿は一切登場しません。
劇中での登場は、アラン・グラント博士の助手であるビリー・ブレナンが、スピノサウルスのものと思われる排泄物(糞)を調査する場面で、比較対象としてその名前を一度だけ台詞の中で言及するのみに留まっています。
しかし、設定上は第1作『ジュラシック・パーク』の時代から公式リストに含まれ、パークで飼育されていた恐竜の一種とされています。
映画制作の初期段階においては、本作『III』のメイン恐竜(看板恐竜)として活躍するのは、実際に採用されたスピノサウルスではなく、このバリオニクスが予定されていたと言われています。ジュラシック・ワールド における活躍
『ジュラシック・パーク』3部作から約10年後、本作『ジュラシック・ワールド』において、パークで飼育されている恐竜としてついにスクリーンに登場しました。
設定上は第1作『ジュラシック・パーク』の時代から公式リストに含まれており、『ジュラシック・パークIII』でもその名前だけは言及されていました。
本作では、残念ながら一瞬だけの登場に留まっています。また、続編(『炎の王国』など)に登場する個体と本作とでは、その姿が異なっている点も特徴です。ジュラシック・ワールド/炎の王国 における活躍
本作にて、シリーズファン待望の完全なスクリーンデビューを果たしました。
バリオニクスは、過去のシリーズ作品(第1作や第3作)においても存在が示唆されていたものの、長らく映像としては登場していませんでした。
設定上は第1作の段階からイスラ・ソルナ島に5頭が生息しており、前作『ジュラシック・ワールド』でもアトラクション「白亜紀クルーズ」にて飼育されている設定でしたが、劇中には登場しませんでした。
そのため、本作での登場は、第1作から数えて苦節22年、後輩格であるスピノサウルス(第3作)に遅れをとること14年を経ての、まさに念願の登場となりました。
なお、前作の公式イラストなどで確認できる個体は、黄土色の体色、目の周りの緑色の模様、頭と腕に羽毛を備えていましたが、本作に登場した個体とは容姿が大きく異なります。
これが雌雄の差によるものかは不明です。
劇中では、今まで登場しなかった鬱憤を晴らすかのように大活躍を見せます。
イスラ・ヌブラル島の火山噴火が迫る中、放水路から地下の制御室(研究ラボ跡)に侵入。
閉じ込められていたクレアとフランクリンに襲いかかり、彼らを絶体絶命の危機に陥れました。
このシーンで特筆すべきは、その常軌を逸した執着心と耐久力です。
一度狙った獲物は徹底的に追い詰める性格のようで、目の前に迫る溶岩が頭に落ち、皮膚が焼けても臆することなく襲撃を続けました。
骨すら溶かすような溶岩を直に受けても大きなダメージを受けた様子を見せないその姿は、イスラ・ヌブラル島の恐竜の中でもトップクラスの防御力を示しています。
また、劇中でははしごを登っているかのような描写もあり、相応の知能を持っていた可能性も示唆されています。
その後、同一個体かは不明ですが、傭兵たちによって捕獲され、アメリカ本土の「ロックウッド・エステート」へと運ばれました。
オークションにて高値で落札されたバリオニクスは、ラストシーンにおいて飛行機でロシアへと移送される様子が描かれています。ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 における活躍
マルタ島でのシーンを中心に、短いながらも強烈なインパクトを残しました。
本作で主に描かれるのは、マルタ島の闇市場(ブラックマーケット)にある闘技場に捕らえられていた幼体です。
アロサウルスやカルノタウルスなどの幼体と共に過酷な環境に収容されていました。
この個体の最大の特徴は、何故か左腕が義手になっている点です。
痛々しくも異様なその姿は、闇市場における恐竜たちの扱いの酷さを物語っています。
物語の中盤、密売組織のサントスたちが逮捕される混乱の中、シリーズの悪役であるレイン・デラコートが、他の幼体恐竜に襲われ転倒し、動けなくなってしまいます。
そこへ義手のバリオニクスが襲いかかり、レインを食い殺すことでトドメを刺しました。
登場シーン自体は限定的でしたが、悪役に引導を渡す重要な役割を果たしています。
また、公式の「Dinotracker」での投稿映像によれば、アメリカ国外でも成体の活動が確認されています。
メキシコで撮影者を追いかける様子や、イギリスで民家のプールに居座っている様子など、世界中に拡散した脅威として描かれています。






























解説
バリオニクスは、白亜紀前期のイギリスに生息していた肉食恐竜です。
その名は「重々しいツメ」を意味し、その名の通り、非常に発達した前肢の先にある大きなかぎ爪(長さ35cmに達する親指の爪など)が最大の特徴です。
体長は8〜10mで、川や湖のほとりで生活していたと考えられています。
川や湖のほとりで生活していたと考えられている
魚食恐竜のパイオニアと食性の謎
バリオニクスの最大の謎は、その特異な食性にあります。
口の部分がワニのように細長く、タケノコのような形状の歯が上下合わせて96本も並んでいました。
タケノコのような形状の歯が上下合わせて96本も並んでいた
他の肉食恐竜のように肉を切り裂くギザギザがないことから、当初は大きな動物を攻撃して倒す能力はないと考えられていました。
しかし、化石の胃の部分から半分消化された魚の化石が発見されたことで、バリオニクスは世にも珍しい魚を主食とした恐竜として注目を集めました。
同じ科に属するスピノサウルスなどと同様に、現代の熊と同じような方法で魚を捕らえて食べていたと考えられています。
一方で、消化器官から未消化のイグアノドンの骨も発見されたことから、完全に魚食性ではなく、陸に住む植物食恐竜の肉も食べていたことが分かっています。
チャンスがあれば前肢の鋭いカギ爪で他の恐竜も襲っていたことでしょう。
狩りのスタイルと身体的特徴
バリオニクスの首と顎は長くほっそりしており、ワニの頭骨とよく似ていました。
細長くて水の抵抗の少ない鼻先で、素早く獲物に噛み付いたものと思われます。
このワニに似た長い吻部と歯の形状は、後に発見されるスピノサウルスやスコミムスといった近縁種を判別する上で重要な手がかりとなり、現在でもこれらの恐竜を研究する上で、バリオニクスの存在は欠かせないものとなっています。
バリオニクスの前肢は獣脚類としては大きく、腕力も強かったようです。
大きく湾曲した親指のかぎ爪は、魚をひっかけて捕まえたり、獲物の腹を裂いたりするのに用いられたと考えられています。
バリオニクスのカギ爪の化石
未解明の全貌と今後の展望
バリオニクスの化石は、1983年にアマチュア化石収集家のウィリアム・ウォーカーによって発見されました。
たった一つだけですが保存状態が良く、全身の骨の約70%が確認されています。
しかし、それでも全身骨格は揃っておらず、未だその全貌は明らかになっていません。
近年、後輩にあたる恐竜の新たな研究が学会に衝撃を与えたことから、いずれバリオニクスも、我々の知らない新しい姿が明らかになる日が来るかもしれません。