恐竜絶滅の謎に迫る!最新の研究から見えてきた真相とは?

今から約6,600万年前、地球の歴史上でも特に劇的な出来事の一つとされる「恐竜の絶滅」が起こりました。
この大量絶滅を引き起こした原因については、長年にわたり様々な説が提唱されてきましたが、現在最も有力視されているのは「巨大隕石の衝突説」です。
2010年春には、世界中の専門家がチームを組み、多数のデータを検証した結果、この大絶滅の原因は巨大な隕石の衝突によるものだったと断定された、というニュースが報じられました。
隕石衝突説が揺るぎない最有力候補である理由

隕石衝突説が揺るぎない最有力候補である理由
なぜ隕石衝突説が最も有力なのでしょうか。
その答えは、絶滅の時期にあたる中生代の白亜紀と、続く新生代の古第三紀との境界を示す地層、通称「K-Pg境界」に隠されています。
このK-Pg境界の地層には、通常の地層では考えられないような特異な痕跡が数多く発見されているのです。
具体的には、以下の3つの証拠が隕石の衝突を裏付けています。
高濃度のイリジウム
地球の地表にはごく少量しか存在しない貴金属のイリジウムが、この地層から高濃度で検出されました。
アメリカのワイオミング州で採取された岩石のK-Pg境界には、上下の層に比べて1,000倍ものイリジウムが含まれていることがわかっています。
イリジウムやプラチナなどの元素は地球の地殻にはほとんど存在しませんが、隕石中に豊富に含まれているため、これは宇宙から飛来した物質が降り積もったことを示唆しています。
衝撃の痕跡
隕石が衝突した際のすさまじい圧力によって生成される衝撃石英や、微小なダイヤモンドがこの地層から見つかっています。
これらの鉱物は、地球上の通常のプロセスでは形成されないものです。
非生物起源のアミノ酸
地球上では見られない、宇宙由来と考えられるアミノ酸も発見されており、これもまた隕石の飛来を強く示しています。
これらの決定的な証拠が示すのは、約10キロメートルの小惑星が地球に衝突したという事実です。
この衝突地点は、現在のメキシコにあるユカタン半島だと考えられており、そこには直径170kmにも達する巨大なクレーターの跡が残っています。
このクレーターは、「チクシュルーブ・クレーター」と呼ばれています。衝突のエネルギーは広島型原爆の10億倍にも匹敵し、その破壊力は想像を絶するものでした。
巨大隕石の衝突が引き起こした連鎖的な大絶滅

巨大隕石の衝突が引き起こした連鎖的な大絶滅
恐竜は隕石の直接的な打撃だけで死んだのではありません。
ユカタン半島のごく一部の恐竜だけが死んだわけではなく、全世界の恐竜が絶滅したのは、衝突が引き起こした連鎖的な大災害によるものだと考えられています。
具体的には、以下の4つのプロセスが連続して起こったとされています。
数千度の熱波に襲われた
巨大隕石が落下した地点を中心に、地殻の表層が気化し、巨大な熱波となって、恐竜を含む生物を襲いました。
その熱波は現在のカナダまで到達したと考えられています。
広範囲に及ぶ森林火災が発生
熱波は宇宙空間まで達し、高温の粉塵が広範囲に降り注いだことで、上空の大気は1,000度を超えたと考えられています。
その結果、地上では大規模な森林火災が発生し、熱波に直接襲われなかった恐竜を含む生物たちが犠牲になりました。
高さ数百メートルの津波が発生
隕石が衝突したことで、周囲に直径200kmに及ぶ巨大なクレーター(穴)ができました。
衝突から数時間後、その穴に海水が流れ込み、その反作用で逆流した水の流れが巨大な津波となって、恐竜たちを襲いました。
この影響はユカタン半島周辺地域だけでなく、世界中に及んだと考えられます。
長期間の「核の冬」が到来
巻き上げられた大量の粉塵によって、太陽光が遮断され、数カ月、あるいは数年の間、「核の冬」に似た状態が続きました。
これにより、気温が急激に低下し、植物が育たず、多くの恐竜がエサを失い、絶滅していきました。
特に、恐竜のような大きな生物は大量のエサを必要とするため、小型の生物よりも早く絶滅したと考えられています。
隕石衝突だけではなかった?絶滅に追い打ちをかけた複合要因説

絶滅に追い打ちをかけた複合要因説
巨大隕石の衝突が最も有力な説であることは間違いありませんが、絶滅の原因はそれ一つだけではなかったという見方も強まっています。
現在のインドに位置するデカン高原では、絶滅の時期とほぼ同時期に大規模な火山噴火が数千年にわたって続いていたことがわかっています。
この火山の大噴火によっても、大量の粉塵や火山ガスが放出され、地球の気候変動に大きな影響を与えたと考えられています。
しかし、火山の噴火だけで世界中の恐竜が絶滅するほどの影響を与えるには、数千年にわたって大規模な噴火が起こり続けなければならないため、単独の原因としては考えにくいという反論もあります。
そのため、巨大隕石の衝突による環境激変に加えて、この火山活動が「追い打ち」をかける形で、多くの生物が絶滅へと追いやられた可能性が高いのです。
その他の絶滅説と生き残った生命たち

その他の絶滅説と生き残った生命たち
隕石衝突説や火山噴火説の他にも、様々な絶滅説が提唱されてきました。
例えば、巨大な彗星が地球に接近したことで大洪水が起こったという「大洪水説」や、致死率の高いウイルスが蔓延したという「伝染病説」、さらには「過度の温暖化」や「氷河期の到来」が原因だとする説もありました。
しかし、これらの説は決定的な証拠が不足していたり、特定の地域の恐竜の絶滅を説明できなかったりするため、現在では有力視されていません。
例えば、氷河期説については、恐竜が絶滅したとされる白亜紀の終わり頃はむしろ温暖な気候であったことが分かっています。
逆に温暖化説は、南極や北極などの気温の低い地域に生息していた恐竜が死に絶えた理由が説明できません。
また、伝染病説についても、海を隔てた島などにまで一斉にウイルスが蔓延するのは難しいという反論があります。
この未曽有の大量絶滅を生き延びた生物も存在しました。
例えば、生態系の中では比較的弱い存在であったカエルは、この極限環境を生き抜いたとされています。
また、恐竜の一グループである鳥類も生き延び、現在も繁栄を続けています。
一方、アンモナイトなど白亜紀末で絶滅した生物も多く、絶滅した種と生き延びた種の違いがどこにあったのかについては、現在も研究が続けられています。
海でも同様に、太陽光が遮られた結果、植物プランクトンが光合成を行えなくなり、それらをエサにしていた生物が絶滅し、巨大な海生爬虫類であるエラスモサウルスやモササウルス、そしてアンモナイトも姿を消しました。
最新の恐竜研究から見えてきた新たな事実

最新の恐竜研究から見えてきた新たな事実
恐竜絶滅の謎を解く鍵として、最大の原因となったチクシュルーブ隕石の研究は飛躍的に進展しています。
最新の科学技術を駆使した分析により、隕石の起源や衝突の詳細が明らかになりつつあります。
2024年には、研究チームが隕石の残骸からルテニウムという希少元素の化学組成を分析し、チクシュルーブ隕石が木星より外側の「外太陽系」で形成された炭素質コンドライト隕石だったことが判明しました。
この発見により、問題の隕石が彗星などの、その他の天体ではなかったことが確認され、白亜紀を終わらせたのが小惑星の衝突であったという説を強く裏付けるものとなりました。
この隕石は、元々は火星と木星の間に位置するバティスティーナ小惑星群から飛び出したもので、恐竜が絶滅する1億年以上も前の1億6000万年前には、すでに地球に向かい始めていたと考えられています。
また、2021年には、東京大学を中心とする研究チームが、チクシュルーブ・クレーター内部から、小惑星由来の元素を高濃度で含む地層を発見しました。
この地層には、イリジウムを含む衝突ダストが含まれており、全球に降り注いだ証拠となっています。
まとめ
恐竜絶滅の明確な原因は、今も完全に解明されたわけではありません。
しかし、K-Pg境界の地層に残された証拠や、複数の要因が複合的に作用したという最新の研究により、その謎は少しずつ明らかにされつつあります。