ディモルフォドン Dimorphodon

名前の由来

二型の歯

科名

ディモルフォドン科

分類

爬虫綱、翼竜目

生息地(発見地)

イギリス

時代

約1億9500万〜1億9000万年前(ジュラ紀前期)

全長

約1.4m(翼幅)

体重

約2kg

食性

肉食

解説

ディモルフォドンは、中生代ジュラ紀前期のヨーロッパ(現在のイギリス)に生息していた小型の翼竜です。
その名はギリシャ語で「二型の歯」を意味し、翼竜の中でも非常に特異な歯の構造と、トカゲのような大きな頭部を持つことで知られています。

「古生物学の母」による発見

ディモルフォドンが初めて人類の歴史に登場したのは、今からおよそ200年前の1828年。
イギリスの著名な化石収集家であり、「古生物学の母」とも呼ばれるメアリー・アニングによって、その化石が地中から掘り起こされました。

彼女が発見した化石は頭が欠けていたため、当初は有名なプテロダクティルスの一種だと判別されました。
しかし、その後、特徴的な頭部の化石も発掘されたことで、これが全くの新種であることが判明しました。

この翼竜は、1859年にイギリスの著名な古生物学者であり、「恐竜」という言葉の生みの親でもあるリチャード・オーウェンによって正式に記載され、「ディモルフォドン」という学名が与えられました。

翼竜のイメージを覆す「二型の歯」と巨大な頭

ディモルフォドンの名前の由来となった最大の特徴は、その口の中にあります。

二型の歯

多くの人が翼竜に抱く「鳥のようなクチバシ」というイメージとは異なり、ディモルフォドンの顎には多くの歯が生えそろっていました。
さらに、その歯は顎の前方にある長く鋭い歯と、後方にある短く小さな歯という、明確に二つの形状に分かれていたのです。

巨大な頭部

ディモルフォドンは翼竜の中でも特に巨大な頭部を持ち、首が短いのが特徴です。
その姿は「翼の生えたラプトル」と形容されることもあるほど、トカゲのような摩訶不思議な印象を与えます。

「翼の生えたラプトル」と形容されている

「翼の生えたラプトル」と形容されている

ただし、このがっしりとした大きな頭骨は、見た目に反して軽い構造になっていました。

飛行能力と歩行をめぐる議論

ディモルフォドンは、翼幅が最大で1.4mとカモメくらいの大きさであり、体長も約1mほどしかありませんでした。
しかし、その体格に対して頭がデカすぎるアンバランスさから、その飛行能力や歩行については多くの議論があります。

飛行能力

頭が大きく翼が妙に小さかったため、さほど飛行能力に秀でていたわけではないと考えられています。
鳥のように終始バタバタと飛び回ることはできず、羽ばたいての自力飛行は可能であったものの、基本的には滑空や降下を中心とした飛行だったとされています。

滑空や降下を中心とした飛行だったとされている

滑空や降下を中心とした飛行だったとされている

歩行

その体の構造から、陸上での歩行はかなり困難であったと考えられており、生息場所は海岸であったと推測されています。
飛行の際に舵取りに使われたとされる長い尾も、歩行の際には役に立たず、陸上で過ごしている時間の殆どは木や崖にぶら下がっていたのではないかと考えられています。
一方で、後肢が長く、その第1指から第4指にかぎ爪があったことから、二足歩行も可能だったのではないかという説もあります。

二足歩行も可能だったのではないかという説もある

二足歩行も可能だったのではないかという説もある

食性論争:魚食か?陸上のハンターか?

ディモルフォドンは肉食であったことは確実ですが、その「二型の歯」を何に使っていたのかについては、長らく議論が続いています。

従来の説(魚食説)

近縁種が魚を食べていたことから、ディモルフォドンも同様に、海岸に生息し、空中から魚を捕らえていたというのが従来の説でした。

近年の有力説(陸上捕食説)

しかし、近年では顎の形状や、推定される飛行能力の低さ、さらには歯の解析結果などから、魚ではなく昆虫や陸上の小型脊椎動物を捕食していたとする説が有力となっています。

もしこの説が正しければ、ディモルフォドンは、ジュラ紀前期のイギリスにおいて、空を滑空し、時には二足歩行で地上を移動しながら小型動物を狩る、ユニークな「小さなハンター」として生態系に君臨していたのかもしれません。

ジュラシック・パーク/ジュラシック・ワールド Jurassic
Park / World
シリーズ登場恐竜

  • ジュラシック・ワールド における活躍

    シリーズ初登場を果たした翼竜です。
    プテラノドンのような巨体を持たず、プテラノドン以外では初となる小型翼竜として登場しました。

    劇中では、パーク内の施設「翼竜ドーム」にて、プテラノドンと共に数多くの個体が飼育されていました。
    しかし、ドームのガラス壁を突き破って侵入してきたインドミナス・レックスによって引き起こされた混乱に乗じ、外へと逃げ出してしまいます。

    インドミナスによって解放されたディモルフォドンの群れは、プテラノドンらと共にパークのメインストリートを襲撃し、取り残された観光客に次々と襲いかかりました。
    そのうちの1頭は主人公であるオーウェンに対しても牙を向けますが、駆けつけたクレアによって麻酔弾を撃ち込まれ、倒されてしまいます。

    悪魔的な風貌ですが、図らずも物語の展開に貢献する場面も見られました。
    また、混乱の終盤、島から脱走しようとした別の個体(1羽)が、インジェン社の狙撃手(傭兵)によって駆除され、海の中へ墜落していくシーンも描かれました。

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