【アジア初】鹿児島・甑島で世界的希少種「セルマサウルス」の化石を発見!歴史を塗り替える3つの理由

鹿児島県薩摩川内市は、同市に属する離島・下甑島(しもこしきしま)の白亜紀後期(約8000万年前)の地層から、極めて希少なモササウルス類「セルマサウルス」のものとみられる化石を発見したと発表しました。
モササウルス類は、白亜紀後期の海を支配した「海の王者」と呼ばれる大型の海生爬虫類です。
これまでセルマサウルスはアメリカ大陸でしか発見されておらず、今回の化石が確定すれば世界で4例目、アジア(日本)では初の発見という歴史的な快挙となります。
本記事では、この世紀の大発見がどのようにしてもたらされたのか、そして世界の古生物学界を驚かせた3つの重大な理由について詳しく解説します。
海の王者「セルマサウルス」とは?恐竜ではない巨大トカゲ
今回化石が発見された「セルマサウルス」は、どのような生物だったのでしょうか。
恐竜ではなく「有鱗目(ゆうりんもく)」の海生爬虫類
大前提として、名前に「サウルス」と付きますが恐竜ではありません。
恐竜時代と同じ中生代白亜紀後期の海に生息していた、現生のトカゲやヘビに近い「有鱗目」に属する大型の海生爬虫類です。
大きな口には鋭い歯が並び、海洋生態系の頂点に君臨する獰猛なハンターでしたが、約6500万年前の巨大隕石衝突による大絶滅で恐竜と共に姿を消しました。
推定体長4〜5mの中型種
一般的なモササウルス類は最大11m以上になりますが、今回見つかったセルマサウルスの個体は、骨の大きさから体長4〜5m程度であったと推定されています。
なぜ「世紀の大発見」なのか?歴史を塗り替える3つの理由
今回発見された縦9cm、幅約4.5cmの骨片は、古生物学界において非常に高く評価されています。
その理由は以下の3点です。
理由①:アジア初の発見(世界でわずか4例目)
これまでセルマサウルス型の化石は、世界中で北米大陸の内陸部(カンザス州やアラバマ州など)から3例しか見つかっていない「超レア種」でした。
そのためアメリカ周辺の固有種と考えられてきましたが、太平洋を隔てたアジアの日本から発見されたことで、「アメリカ大陸にしかなかった」というこれまでの常識が見事に覆されました。
理由②:生息年代を大きく更新(最も新しい化石)
過去3例の化石は、約8600万年前〜8100万年前(または8300万年前)の地層から見つかっていました。
対して今回の化石は「約8000万年前」の地層から出土しました。
これは「これまでで最も新しい時代を生きたセルマサウルスの化石」となる可能性が高く、彼らの生存年代を現代に近い時代へと大きく延長させる発見です。
理由③:アジアにおける多様性の証明
アメリカにしかいないと思われていた種がアジアの海にも泳いでいたことは、白亜紀後期のモササウルス類が想像以上に広範囲を移動し、豊かな多様性を持っていたことを示しています。
アジア全体のモササウルス類の進化の歴史を知る上で、世界的な貢献となります。
発見の舞台裏:化石の宝島「甑島」と専門家の鑑定劇
この大発見は、「化石の宝島」と呼ばれる薩摩川内市の下甑島(姫浦層群)でもたらされました。
2022年7月の発見
集中発掘調査の最中、当時市の学芸員を務めていた三宅優佳さん(現・兵庫県立人と自然の博物館研究員)が奇妙な骨の化石を掘り出しました。
2023年の鑑定
甑ミュージアムの調査の中、世界的権威である米シンシナティ大学の小西卓哉准教授が島を訪れました。
突起の形状や骨の曲がり方から、モササウルス類の顎関節を構成する「方形骨(ほうけいこつ)」に酷似していると見抜き、共同研究の結果、セルマサウルスである可能性が非常に高いと断定されました。
なお、これまで九州におけるモササウルス類の化石発見は3例ありましたが、すべて「歯」でした。
今回のように「歯以外の骨(方形骨)」が見つかったのは九州初であり、その点でも画期的な出来事です。
発見者・専門家の喜びの声
小西卓哉准教授
「北米から離れた日本の南西部から出てきたことで、他のどこから出てきてもおかしくないと言えるようになった。分布や進化の歴史がより分かっていく発見だ」
三宅優佳さん
「世界的な貢献ができてうれしい。甑島でしか分からない発見を今後も期待できる」
今後の展望:甑ミュージアムでの特別展示
この歴史的なセルマサウルスの方形骨化石は、薩摩川内市にある「甑ミュージアム」にて特設展示されています。
大村慎吾館長は、「子どもたちをはじめ多くの方に知ってもらい、夏休みの自由研究などで甑島を訪れて恐竜体験をしてほしい。恐竜(海生爬虫類)の魅力を感じてもらえれば」と、次世代の好奇心を刺激するきっかけとなることに期待を寄せています。
太古の海を支配した王者たちの真の姿を解き明かすための研究は、「化石の宝島」甑島から世界へ向けて、これからも発信され続けていくでしょう。















