アルゼンチンのサンファン国立大学古生物学者Ricardo N. Martinezが、Paul Callistus Sereno率いるアメリカのシカゴ大学と共同で発掘を行なっていた際に発見し、イスチグアラスト層のCancha de Bochas泥質の岩石から、約1年かけてほぼ全身の化石を掘り出しました。
1993年には、Paul Sereno、Catherine Forster、Raymond R. Rogersらによって、新属エオラプトル(Eoraptor)、新種Eoraptor lunensisが論文に記載されました。
解説
学名「エオラプトル・ルネンシス」。
キツネくらいの大きさのこの恐竜は、最初に現れた恐竜の一種でした。
最古級の恐竜であるヘレラサウルスとほぼ同時代に生息していたとされています。
単純な構造のあご関節、貧弱な骨盤から、極めて原始的な恐竜だとされ、「夜明け(最初)の泥棒(簒奪者)」という意味合いを持つエオラプトルの名前がつけられました。
巨大化には至らず恐竜の中では小型でしたが、賢さと俊敏さにおいては近縁種の中で特に優れており、他の小動物にとっては恐ろしいハンターでした。
鋭い歯をもった長いあごの持ち主でしたが、噛む力は強くありませんでした。
長い首を自由に動かして、素早く逃げる獲物を捕まえたり、シダ類やソテツなどの植物を食べたりしていました。
エオラプトルの歯は、前歯と奥歯で形が異なっています。
前歯は植物食に適した、原竜脚下目に見られる木の歯形、奥歯は肉食に適した、獣脚類特有のカーブ型でした。
前肢には5本の指がありましたが、その内の3本が長く、鋭く力強い爪をもっていました。
その爪と歯で、獲物を押さえつけていたのでしょう。
また、鋭い爪は、植物をとったり、敵から身を守るためにも役立ちました。
物を掴むこともでき、活動的で動作も素早かったため、自分と同程度に大きい獲物を捕食できたと考えられています。
前肢の2倍の長さがあった後肢はたいへん強力で、2本足で立って、長い尾でバランスをとっていました。
2本足で走ることで、素早く獲物を追いかけたり、天敵から逃げたりすることができました。
エオラプトルは、鳥のように3本の指のつま先で立って走っていました。
もう1本指がありましたが、それは短く、地面には届かない位置についていました。
目は顔の横についていて、周りを見わたすことができ、より大きな肉食恐竜から逃げるためには重要なことでした。
皮ふの化石は見つかっていないため、うろこで覆われていたのか、羽毛をもっていたのかはわかっていません。
しかし、暖かい地域にすんでいたため、体を羽毛で温める必要は無かったかもしれません。
分類学的には、見つかった当初は肉食恐竜の獣脚類と考えられていましたが、現在では竜脚形類とする考えが強まっています。しかし、獣脚類とする文献も多く、分類については未だに明確な結論は出ていません。
エオラプトルの化石が発見されたのは1991年
最初に発見されたのは1991年。
アルゼンチンのサンファン国立大学古生物学者Ricardo N. Martinezが、Paul Callistus Sereno率いるアメリカのシカゴ大学と共同で発掘を行なっていた際に発見し、イスチグアラスト層のCancha de Bochas泥質の岩石から、約1年かけてほぼ全身の化石を掘り出しました。
1993年には、Paul Sereno、Catherine Forster、Raymond R. Rogersらによって、新属エオラプトル(Eoraptor)、新種Eoraptor lunensisが論文に記載されました。
1997年、Philip Currieは「鳥盤目と竜盤目、両方の特徴を持つこと」を報告し、さらに2011年の新属恐竜エオドロマエウスが研究されたことで、エオラプトルの分類について議論に拍車がかかりました。
2013年にはついに、発見者のRicardo N. Martinezは、「原始的な竜脚形類であった可能性が高い」とする主張をしました。
エオラプトルの骨格
発見された化石は頭骨の大きさが約20cmのほぼ完全な骨格でしたが、化石の個体は眼窩が大きい事からまだ子供だったと言われており、成長すれば2~3mになった可能性もあります。
月の谷
種小名のルネンシスは、最初に化石が発見された場所が「月の谷」と呼ばれている事から来ているそうです。
アルゼンチンの北西、まるで月面のような砂岩と泥岩の光景のこの谷は、三畳紀後期には川が流れていました。