ヘレラサウルス Herrerasaurus
名前の由来
へレラ(化石を発見したアルゼンチン人 ビクトリノ・ヘレラ)のトカゲ
科名
ヘレラサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類
生息地(発見地)
アルゼンチン
時代
約2億3000万〜2億2000万年前(三畳紀後期)
全長
約3~6m
体重
約350kg
食性
肉食
Jurassic
Park / World シリーズ登場恐竜
ジュラシック・パーク における活躍
本編において、生体が登場することはありませんでした。
しかし、設定上はパークで飼育されていたことになっており、パークの地図内にはヘレラサウルス専用のパドックを示すマーカーが存在しており、その標識には頭骨が描かれていました。






















解説
ヘレラサウルスは、三畳紀後期の南アメリカ、現在のアルゼンチンに生息していた肉食恐竜です。
最古の獣脚類の一つと言われており、恐竜時代の幕開けを飾る存在として、トップクラスの知名度を誇っています。
発見の歴史:「月の谷」に眠る最古の恐竜
ヘレラサウルスの化石は、1950年代の後半に地元の職人(農夫という話もある)であるビクトリノ・ヘレラによって最初に発見されました。
属名は彼の名にちなんで「ヘレラのトカゲ」と名付けられました。
しかし、発見当初は下半身しか見つかっていなかったにもかかわらず、情報が不十分なまま全身骨格が復元されるなど、研究は難航しました。
科学的な記述がなされたのは発見から30年ほど経った1988年のことです。
同年、アルゼンチンの「月の谷」(バジェ・デ・ラ・ルナ)で、著名な古生物学者ポール・セレノによってほぼ完全な骨格が発見されたことで、ヘレラサウルスが真の恐竜であることが確定し、しっかりとした復元が可能となりました。
(この化石を元に作られた新しい復元骨格は、日本国内でも見ることができます。)
三畳紀の巨大ハンターと身体的特徴
ヘレラサウルスは、体長およそ3~6m、体重350kgほどに達しました。
後のアロサウルスやティラノサウルスと比べればかなり小柄ですが、恐竜が出現したばかりの三畳紀においては、これでも十分巨大な捕食者でした。
軽量化された骨格
ヘレラサウルスの骨は薄く、中身が中空でした。
これにより、骨の強度は下がりましたが、体重は大幅に軽減され、素早い動きを可能にしていたと考えられています。
柔軟な顎
現生のヘビのように顎の関節がゆるく、口を大きく開くことが可能でした。
これにより、自分よりも大きな獲物にも噛みつくことができました。
化石の肋骨の間からは大型の獲物(スカフォニクスの仲間)の骨が含まれていたことから、急速な進化を遂げたことがわかります。
歩行
当時の捕食動物の主流は四肢歩行もしくは半二肢歩行の主竜類だったため、直立した二肢歩行をするヘレラサウルスは、当時は特に活発で攻撃的な捕食者だったと言われています。
原始的な獣脚類の謎:「進化の袋小路」
ヘレラサウルスは最古の獣脚類とされながらも、その後の獣脚類とは異なる原始的な特徴を多く持っていました。
5本の指
一般的な獣脚類が前肢3本、後肢4本指であるのに対し、ヘレラサウルスは前肢・後肢ともに5本指が残っており、非常に原始的であることがうかがわれます。
分類論争
首が直線的であまり動かせなかったり、骨盤が小さかったりするなど、その体のつくりは独特でした。
そのため、「そもそも獣脚類に含めて良いのか」という論争が起こるほどでした。
進化の袋小路
その一方で、骨盤は妙に進歩的な作りになっており、ヘレラサウルスは「進化の袋小路にはまった」恐竜と言われることが多く、のちの獣脚類の祖先ではないと考えられています。
竜脚形類説
骨格に原始的な点が多く、そもそもこの動物を恐竜に含めるべきではないという考えもありましたが、下顎に関節を備えていること等から、現在は原始的な竜脚形類であるとする見方が強いです。
真の恐竜
恐竜の主要な特徴のひとつに、仙椎(腰にあたる部分の脊椎骨)が3個以上癒合していることがあり、これはヘレラサウルスも同様です。
この点から判断すると、ヘレラサウルスは真の恐竜とみなしてよいでしょう。
三畳紀の覇権争い:恐竜 vs 古代ワニ
今から約2億3,000万年前の南米には、主に3つの生物グループが覇権を争っていました。
この3つのうち、当初最も勢力を伸ばしていたのはラウイスクス科でした。
彼らは平均6m超えの圧倒的な体躯と凶暴性を武器に、恐竜やキノドン類を圧倒し、南米の生態系の頂点に君臨していました。
しかし、そこに待ったをかけたのが、彼らと同じ体躯を誇るヘレラサウルスなどの巨大な恐竜たちでした。
恐竜は徐々に勢力を拡大し、ついにラウイスクス科との抗争が勃発します。
大柄ながらも俊敏な動きで相手を翻弄するヘレラサウルスに対し、比較的鈍重なラウイスクスは苦しめられました。
絶滅と次世代への継承
両者が疲弊し、勝負がつくかと思われたその時、恐竜グループの内部で内紛が勃発します。
コエロフィシス科なる小型で俊敏な恐竜たちが突如として現れ、ヘレラサウルスを裏切り、ラウイスクスともども両者を苦しめました。
そして、この内紛が起こったのと時を同じくして、三畳紀の大絶滅が発生。
生態系が崩壊する大事件の中、ヘレラサウルスとラウイスクスは共々死滅することとなりました。
一方、反旗を翻したコエロフィシスの一派は、この大絶滅をなんとか生き延び、彼らの血筋が、私たちがよく知る後の時代の肉食恐竜たちの源流となっていったのです。