エオティラヌス Eotyrannus

名前の由来

暁の暴君

科名

ティラノサウルス上科

分類

双弓亜綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

イギリス

時代

約1憶3000万年前(白亜紀前期)

全長

約4~5m

体重

約100~200kg

食性

肉食

解説

白亜紀前期のイギリス。
まだティラノサウルスなどの巨大な捕食者が登場する遥か前の時代、霧深き島の生態系に、後の「最強肉食恐竜」へと繋がる進化の鍵を握る恐竜が生息していました。

「エオティラヌス」と呼ばれるその恐竜は、「暁の暴君」という勇ましい意味の名を持ち、ティラノサウルス類の進化過程におけるミッシングリンクとして極めて重要な位置を占めています。

「暁の暴君」の発見:恐竜の島・ワイト島にて

学名に込められた「暁(夜明け)」の意味

エオティラヌスの学名「エオティラヌス」は、ギリシャ語の組み合わせで名付けられました。

  • Eos:「暁(夜明け)」
  • Tyrannus:「暴君」
  • 意味:「暁の暴君」

この名前は、彼らがティラノサウルス上科に属し、後の時代に地上を支配するティラノサウルスの仲間の中で、最も初期(夜明けの時代)の恐竜のひとつであることに由来しています。

1995年の発見と命名

化石が発見されたのは、イギリス南部の「ワイト島」です。
ここは鎧竜ポラカントゥスや肉食恐竜ネオヴェナトルの産地としても知られる、世界有数の恐竜化石の宝庫です。
1995年頃、地元の化石マニアによって発見された骨がきっかけとなり、詳細な研究を経て2001年に正式に新属新種として命名されました。

進化のミッシングリンク:原始的な「腕」と先進的な「歯」

エオティラヌスの体には、後のティラノサウルスと共通する「先進的な特徴」と、古い祖先の「原始的な特徴」がパズルのように混在しています。

祖先の面影を残す「長く器用な腕」

進化型のティラノサウルス類とは決定的に異なるのが「腕」です。
ティラノサウルスといえば「短くて指が2本」の前肢が有名ですが、エオティラヌスの前肢は長く発達しており、そこには細長い指が「3本」ありました。
これは原始的な祖先の特徴であり、彼らはこの機能的な腕を器用に使って獲物を捕らえていたと考えられています。

ティラノサウルスへの道標「D字形の歯」

一方で、彼らがティラノサウルス類であることを示す決定的な証拠が、頭蓋骨に残されています。
上あごの前方に並ぶ歯の断面は「D字形」をしており、ノコギリ状の歯が後方を向いて2列に並んでいました。
この特徴は、後のティラノサウルス科に見られる典型的な特徴と完全に一致します。

俊足のハンター

また、後肢はほっそりとしており、特にすねの骨が長いのが特徴です。
これは走る能力に長けていることを示しており、彼らはスマートな体躯で大地を高速で駆け回っていたといわれています。
※分類に関しては、近年「メガラプトラ」説も指摘されましたが、現在は初期のティラノサウルス上科である説が有力視されています。

ネオヴェナトルとの「棲み分け」戦略

中型の捕食者としての立ち位置

エオティラヌスの全長は推定4~5m。
決して小さくはありませんが、当時のワイト島にはさらに巨大な捕食者がいました。
生態系の頂点には、大型の「ネオヴェナトル」や「バリオニクス」が君臨しており、エオティラヌスは彼らに比べると小柄でした。

俊足を活かした生存戦略

もし正面から争えば勝ち目はありません。
そのため、エオティラヌスは大型捕食者との直接的な競合を避ける戦略をとっていました。
自慢の俊足を活かして素早く動き回り、主に「ヒプシロフォドン」などの小型恐竜を捕食することで、異なるニッチ(生態的地位)を確保し生き残っていたのです。

謎多き化石と日本(福井)との関わり

保存状態の悪さと残された謎

エオティラヌスは非常に重要な恐竜ですが、見つかっている化石は爪や尺骨、頭蓋骨の一部などに留まり、保存状態は良くありません。
そのため、全身のプロポーションなどの全貌には未だ多くの謎が残されています。

福井県立恐竜博物館で会える!

イギリスで発見された謎多き恐竜ですが、実は日本でもその姿を確認することができます。
世界有数の規模を誇る「福井県立恐竜博物館」には、このエオティラヌスの復元骨格が展示されています。
最新の研究に基づいた復元骨格を通じて、ティラノサウルスの原点とも言えるその姿を間近で観察することができるのです。

この恐竜を見た人は
こんな恐竜も見ています
ティラノサウルス