メガプテリギウス Megapterygius 名前の由来 和歌山産の大きな翼科名 モササウルス科分類 爬虫綱、双弓亜綱、有鱗目生息地(発見地) 日本時代 約7200万年前(白亜紀後期)全長 約6m体重 約150〜450kg食性 魚食解説恐竜たちが陸上を支配していた白亜紀後期、海の世界では「モササウルス類」という巨大な海生爬虫類が食物連鎖の頂点に君臨していました。 これまでモササウルス類といえば、ワニやヘビのように長い体をくねらせて泳ぐ獰猛な捕食者というイメージが定着していました。しかし、2006年に和歌山県有田川町で発見され、2023年末に新属新種として正式に記載された化石が、その常識を根底から覆しました。 通称「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」、学名「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」です。和歌山から奇跡の帰還!アジア初のモササウルス類全身骨格メガプテリギウスの物語は、2006年に当時京都大学大学院生であった御前明洋氏による偶然の発見から始まりました。有田川町の山中でアンモナイトを探していた際、硬い岩盤に奇妙な化石が露出しているのを発見。 これが端緒となり、本格的な発掘調査がスタートしました。 現場は非常に硬い岩盤層で、重機の振動で化石が粉々になる危機もあるほど作業は困難を極めました。 しかし、研究者たちの執念と膨大なクリーニング作業の末、ほぼ完全な頭骨や前後のヒレを含む、全身の半分以上に及ぶ奇跡の骨格が姿を現したのです。モササウルス類において、前肢と後肢の両方が揃った状態で発掘されたのはアジア初の快挙でした。学名の意味は「和歌山産の大きな翼」長年の研究の末、2023年12月に新属新種として正式に記載されました。学名メガプテリギウス・ワカヤマエンシス(Megapterygius wakayamaensis)意味ギリシャ語の「大きい(megas)」「翼(pterygion)」と、ラテン語の「〜産の(-ensis)」を組み合わせたもので、後述する巨大なヒレにちなみ「和歌山産の大きな翼」を意味します。通称広く親しんでもらうため、公式に「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」と名付けられました。 (※ソウリュウ=青海原のトカゲを意味し、モササウルス類の和名として使われます)定説を覆す!ワカヤマソウリュウの特異な身体構造メガプテリギウスの推定全長は約6m。 中型のモササウルス類ですが、その骨格にはこれまでの常識を覆すユニークな特徴がいくつもありました。頭より長い「巨大な前後のヒレ」最大の特徴は、学名の由来にもなった巨大なヒレです。 ヒレの長さは頭骨よりも長く、さらに「前ヒレより後ろヒレの方が長い」という極めて珍しい特徴を持っています。 これまでのモササウルス類は体をくねらせて泳いだと考えられていましたが、彼らはこの横に張り出した巨大なヒレを使い、ウミガメやペンギンのように「パタパタとはばたくように」水を掻いて推進力を得ていたと推測されています。世界初!「背ビレ」の存在を示唆モササウルス類には背ビレはないというのが世界の定説でしたが、メガプテリギウスの背骨(第17〜21椎)の棘突起が前方へ屈曲していることが判明しました。 これはイルカやサメのような「背ビレ」が存在していた可能性を強く示唆しており、モササウルス類の世界初の大発見です。獲物を立体的に捉える「両眼視」眼窩(目の入る穴)付近が左右に張り出しており、左右の視野が前方に重なる「両眼視(立体視)」ができていた可能性が示されました。 距離感を正確に測る能力であり、モササウルス類で確認されたのは世界でわずか2例目です。獰猛な暴君ではない?メガプテリギウスの真の姿と生態これらの特徴から、彼らがどのような生活を送っていたかが浮かび上がってきます。機動力と正確性で小魚を狙うハンターメガプテリギウスの頭は比較的小さく、顎や歯も華奢でした。 そのため、大型の獲物を力任せに噛み砕くのではなく、群れで泳ぐ「小魚」を主食にしていたと考えられます。巨大な前後のヒレを鳥の翼のように駆使して、海中を急加速・急旋回・急浮上・急潜航し、逃げ回る小魚を追い詰めます。 そして、前方を向いた眼による「両眼視」で正確に距離を測り、ピンポイントで捕食していたのでしょう。絶滅した「魚竜」のニッチを埋める進化メガプテリギウスが生息していた白亜紀後期には、中生代の海を長く支配していたイルカ型の「魚竜」はすでに絶滅していました。 巨大なヒレや背ビレ(の可能性)を持ち、魚竜によく似たシルエットと機敏な泳ぎ方をする彼らは、絶滅した魚竜のニッチ(生態的地位)に進出し、同じような形態へと進化(収斂進化)を遂げた結果だと考えられています。海洋爬虫類研究の新たな扉を開く至宝和歌山県で発見されたメガプテリギウス・ワカヤマエンシス(ワカヤマソウリュウ)は、単なる「日本で見つかった新しい化石」ではありません。アジア初のほぼ完全な全身骨格「はばたく泳ぎ方」の推定世界初の「背ビレ」の示唆両眼視と収斂進化の証明これらの事実は、モササウルス類が想像以上に多種多様な形状と生態へと進化し、豊かな海洋生態系を築いていたことを証明しています。 硬い岩盤から救い出された「和歌山産の大きな翼」は、太古の海の真の姿を教えてくれる世界的な至宝なのです。 PREV メトリオリンクス プレシオサウルス NEXT この恐竜を見た人はこんな恐竜も見ています セグノサウルス Segnosaurus 分類獣脚類 特徴草食恐竜 時代白亜紀 エラスモサウルス Elasmosaurus 分類海の爬虫類 特徴肉食恐竜 時代白亜紀 アルヴァレツサウルス Alvarezsaurus 分類獣脚類 特徴肉食恐竜 時代白亜紀 ファルカリウス Falcarius 分類獣脚類 特徴草食恐竜羽毛恐竜 時代白亜紀 スポンサーリンク スポンサーリンク
解説
恐竜たちが陸上を支配していた白亜紀後期、海の世界では「モササウルス類」という巨大な海生爬虫類が食物連鎖の頂点に君臨していました。
これまでモササウルス類といえば、ワニやヘビのように長い体をくねらせて泳ぐ獰猛な捕食者というイメージが定着していました。
しかし、2006年に和歌山県有田川町で発見され、2023年末に新属新種として正式に記載された化石が、その常識を根底から覆しました。
通称「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」、学名「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」です。
和歌山から奇跡の帰還!アジア初のモササウルス類全身骨格
メガプテリギウスの物語は、2006年に当時京都大学大学院生であった御前明洋氏による偶然の発見から始まりました。
有田川町の山中でアンモナイトを探していた際、硬い岩盤に奇妙な化石が露出しているのを発見。
これが端緒となり、本格的な発掘調査がスタートしました。
現場は非常に硬い岩盤層で、重機の振動で化石が粉々になる危機もあるほど作業は困難を極めました。
しかし、研究者たちの執念と膨大なクリーニング作業の末、ほぼ完全な頭骨や前後のヒレを含む、全身の半分以上に及ぶ奇跡の骨格が姿を現したのです。
モササウルス類において、前肢と後肢の両方が揃った状態で発掘されたのはアジア初の快挙でした。
学名の意味は「和歌山産の大きな翼」
長年の研究の末、2023年12月に新属新種として正式に記載されました。
学名
メガプテリギウス・ワカヤマエンシス(Megapterygius wakayamaensis)
意味
ギリシャ語の「大きい(megas)」「翼(pterygion)」と、ラテン語の「〜産の(-ensis)」を組み合わせたもので、後述する巨大なヒレにちなみ「和歌山産の大きな翼」を意味します。
通称
広く親しんでもらうため、公式に「ワカヤマソウリュウ(和歌山滄竜)」と名付けられました。
(※ソウリュウ=青海原のトカゲを意味し、モササウルス類の和名として使われます)
定説を覆す!ワカヤマソウリュウの特異な身体構造
メガプテリギウスの推定全長は約6m。
中型のモササウルス類ですが、その骨格にはこれまでの常識を覆すユニークな特徴がいくつもありました。
頭より長い「巨大な前後のヒレ」
最大の特徴は、学名の由来にもなった巨大なヒレです。
ヒレの長さは頭骨よりも長く、さらに「前ヒレより後ろヒレの方が長い」という極めて珍しい特徴を持っています。
これまでのモササウルス類は体をくねらせて泳いだと考えられていましたが、彼らはこの横に張り出した巨大なヒレを使い、ウミガメやペンギンのように「パタパタとはばたくように」水を掻いて推進力を得ていたと推測されています。
世界初!「背ビレ」の存在を示唆
モササウルス類には背ビレはないというのが世界の定説でしたが、メガプテリギウスの背骨(第17〜21椎)の棘突起が前方へ屈曲していることが判明しました。
これはイルカやサメのような「背ビレ」が存在していた可能性を強く示唆しており、モササウルス類の世界初の大発見です。
獲物を立体的に捉える「両眼視」
眼窩(目の入る穴)付近が左右に張り出しており、左右の視野が前方に重なる「両眼視(立体視)」ができていた可能性が示されました。
距離感を正確に測る能力であり、モササウルス類で確認されたのは世界でわずか2例目です。
獰猛な暴君ではない?メガプテリギウスの真の姿と生態
これらの特徴から、彼らがどのような生活を送っていたかが浮かび上がってきます。
機動力と正確性で小魚を狙うハンター
メガプテリギウスの頭は比較的小さく、顎や歯も華奢でした。
そのため、大型の獲物を力任せに噛み砕くのではなく、群れで泳ぐ「小魚」を主食にしていたと考えられます。
巨大な前後のヒレを鳥の翼のように駆使して、海中を急加速・急旋回・急浮上・急潜航し、逃げ回る小魚を追い詰めます。
そして、前方を向いた眼による「両眼視」で正確に距離を測り、ピンポイントで捕食していたのでしょう。
絶滅した「魚竜」のニッチを埋める進化
メガプテリギウスが生息していた白亜紀後期には、中生代の海を長く支配していたイルカ型の「魚竜」はすでに絶滅していました。
巨大なヒレや背ビレ(の可能性)を持ち、魚竜によく似たシルエットと機敏な泳ぎ方をする彼らは、絶滅した魚竜のニッチ(生態的地位)に進出し、同じような形態へと進化(収斂進化)を遂げた結果だと考えられています。
海洋爬虫類研究の新たな扉を開く至宝
和歌山県で発見されたメガプテリギウス・ワカヤマエンシス(ワカヤマソウリュウ)は、単なる「日本で見つかった新しい化石」ではありません。
これらの事実は、モササウルス類が想像以上に多種多様な形状と生態へと進化し、豊かな海洋生態系を築いていたことを証明しています。
硬い岩盤から救い出された「和歌山産の大きな翼」は、太古の海の真の姿を教えてくれる世界的な至宝なのです。