恐竜の繁栄と巨大化の謎
恐竜は、なぜ繁栄したのか?
三畳紀後期に出現した恐竜の出発点は、物陰に隠れて暮らす小動物に過ぎませんでした。
その後、彼らが爆発的に種類を増やし、繁栄を築いた秘密は何でしょうか。
恐竜の出現当初は、陸生大型動物の生息場所(生態的位置)はワニや哺乳類の縁者らによって埋め尽くされていました。
特にワニに近縁の爬虫類の中には、恐竜に匹敵する直立した四肢と高い運動性を備えたものもいました。
三畳紀後期にこれらの動物が急速に衰退した決定的な理由は不明ですが、彼らは循環器系の構造上、多量の飲み水を必要とする動物だったと考えられます。
三畳紀後期に地球の乾燥化が進んだため、これらの大型動物は陸地からの退場を余儀なくされたのでしょう。
一方、現生の恐竜である「鳥」は大量の飲み水を必要とせず、白い固形の尿を排泄しますが、恐竜も同じように節水型の動物だったと考えられています。
恐竜が繁栄した最大の理由は、「おしっこの量が少ないから」という、 気の抜けるようなものだった可能性も高いのです。
また、恐竜が最も繁栄したジュラ紀は、活発な火山活動によって、大気中の二酸化炭素濃度は現在の20倍にまで達しており、その結果、大量の二酸化炭素が熱を閉じ込め、地球の平均気温は現在より10度以上も高かったと考えられています。
(北極圏の近くでも平均気温が15度くらいだったと言われています。)
このような温暖な気候が植物を育んだことで、植物を食べる恐竜が増え、恐竜たちの繁栄につながったとも考えられています。
恐竜は、なぜ巨大化したのか?
繁栄はともかく、恐竜が巨大化した理由はどのようなものだったのでしょうか。
具体的には、下記のような説が考えられています。
1. 巨大化に適した骨格だった
恐竜の場合は、出現当初から胴の直下に伸びた長く頑丈な後肢をもっていました。
爬虫類のようにガニ股のような骨格だと、体重の負荷が足の付け根にきてしまいますが、恐竜は直立歩行のため、重い体を支えるのに適していました。
最古の恐竜であるエオラプトルらの小型肉食恐竜は、すでに高速で走る能力を身に付けていたわけですが、これは「荷重にも耐えられる」ということを意味していました。
つまり、恐竜は地球上に出現した時点から、のちに巨大な植物食動物にも進化できる条件を備えていたのです。
2. 巨大化に適した呼吸器系だった
恐竜の体には、肺を補助する器官である「気嚢(きのう)」が各所に張り巡らされおり、より効率的に酸素を取り入れることが出来ました。
ワニやオオトカゲも気嚢を持っていますが、恐竜における気嚢の発達は群を抜いています。
十分な酸素が体中に行き渡ることで、巨大な体が形成されたのです。
さらに、恐竜の気嚢には下記のようなメリットがありました。
まず単純に、体を軽く保てたことです。
しかも骨の間にこうした隙間があった方が体の強度も高まります。
次に、体中に気嚢があるおかげで、ガス交換がスムーズに行われていました。
渡り鳥であるツルが、酸素の薄いヒマラヤ上空でも飛べるのはそのためです。
このように、気嚢は恐竜の巨大化を支えただけでなく、ジュラ紀中期から後期にかけて完成した空への進出、つまり鳥類の進化にも関与していたのです。
3. 生きている限り成長するから
これは化石から判断されます。
恐竜と近縁である爬虫類にも見られる傾向で、哺乳類などとは異なり、恐竜は生きている限り成長し続けていました。
4. 当時は食料が豊富だったから
三畳紀以降、地球上の気候は温暖になり、大量の植物が地球上に存在していました。
このため、恐竜も多量の食事を取ることが出来ました。
ただ、植物の成長が促進された分、体積当たりの栄養価が(もやしのように)極端に低くなり、植物食恐竜の多くは大量に食べる必要が生じて大型化を遂げたとも考えられています。
5. 捕食者から身を守るため
ある程度大型化すると敵から走って逃れることが困難となりますが、大きくなることで、捕食者にとっては仕留めにくくなる傾向があり、敵が少なくなるというメリットがあるため、防衛の観点からより大型化を極めた可能性もあります。
このことは、皮肉にもそれらを捕食する者たち(肉食恐竜)の大型化という結果も招いてしまったようです。
6. 小型化に失敗したから
恐竜の多くは人間より小さいものでしたが、成体でもネズミほどに小型のものは1〜2種しか知られていません。
哺乳類やその祖先とされる動物が、先に小型で活発な動物として環境に適応してしまったため、恐竜は「小型化に失敗した」ものと思われます。
哺乳類に行き場を塞がれた恐竜の中には、活路を巨大化に求めたものがいたと考えられるのです。