【古生物学の新説】先史時代の装甲恐竜「アンキロサウルス科」は地面を掘って自己防衛できたかもしれない

背中を覆うトゲ状の装甲に、岩をも砕く巨大な尾のハンマー。
白亜紀後期(約8400万~7200万年前)を代表する草食恐竜「アンキロサウルス科」の恐竜たちは、まさに「歩く要塞」と呼ぶにふさわしい姿をしていました。
しかし、無敵に見える彼らにも、実は致命的な弱点がありました。
本記事では、アンキロサウルス科の恐竜がいかにしてその弱点を守り、過酷な白亜紀を生き抜いたのかを解き明かす、驚きの最新研究(定説を覆す「穴掘り」の生存戦略)について詳しく解説します。
歩く要塞の致命的な弱点:柔らかい「下腹部」
重厚な鎧をまとったアンキロサウルス科の恐竜たちですが、装甲で覆われていない「柔らかい下腹部」という弱点がありました。
ティラノサウルス・レックスのような凶悪な大型肉食恐竜から身を守るためには、「いかにしてひっくり返されず、お腹を守るか」が生死を分ける重要な鍵でした。
長らくの間、彼らは敵が来ると「ただ地面に伏せてやり過ごしていた」というのが古生物学における定説でした。
覆る定説!最新研究が明かした「穴掘り」スキル
しかし、その定説に新たな一石を投じるユニークな研究結果が、科学誌『Scientific Reports』にて発表されました。
韓国・ソウル大学校のリー・ヨンナム(Lee Yuong-Nam)教授らの研究チームによると、アンキロサウルス科の恐竜は単に伏せるだけでなく、「自ら地面を掘って」身を守っていた可能性が高いというのです。
化石標本が語る「穴掘り名人」の証拠
研究チームは、1970年代にモンゴルのゴビ砂漠南部(バルンゴヨット層)で発見されたアンキロサウルス科の骨格標本(MPC-D 100/1359)を詳細に調査しました。
その結果、彼らの解剖学的な特徴が「穴掘り」に特化した見事な構造をしていることが判明しました。
シャベルのような前肢
前肢の骨が浅いアーチ状に配置されており、柔らかい土を効率よく掻き出せるショベルカーのような構造でした。
強力なアンカー
いくつかの背骨(椎骨)が融合し、後肢の骨の数も少ない構造でした。
これは地面を掘る際や尾を振り回す際に、踏ん張って体を固定するアンカーの役割を果たしていました。
ブレない体幹
中央部が幅広く前後が細く絞られたずんぐりとした体型が、激しい掘削作業中も体のバランスを真っ直ぐに保つ安定性をもたらしていました。
なぜ穴を掘った?「難攻不落の要塞」とサバイバル術
では、彼らは一体何のために地面を掘っていたのでしょうか。
弱点の下腹部を守る「絶対防御」
最大の理由は、「絶対防御の陣形」を敷くためです。
自ら掘った浅い穴にすっぽりと身を沈めてかがみ込めば、体の側面や足元が土でガードされます。
この塹壕(ざんごう)のような状態になれば、いくら強大な肉食恐竜でも、重武装の彼らを横転させて弱点の下腹部を狙うことはほぼ不可能です。
自ら穴を掘ることで「難攻不落の要塞」を完成させていたのです。
過酷な環境を生き抜くサバイバル術
さらに、この穴掘りスキルは防御だけでなく、厳しい自然を生き抜くためのサバイバル術としても大いに役立っていたと推測されています。
食料確保
地中深くにある栄養価の高い「植物の根」を掘り起こして食べる。
水分確保
乾燥した環境で、地表下の隠れた「水脈」を探り当てる。
栄養補給
現代のアフリカゾウが岩塩を舐めるように、堆積物を深く掘って「ミネラル分」を補給する。
したたかで賢い生存戦略
他のアンキロサウルス科の恐竜にも同様の骨格的特徴が見られることから、この「穴掘り能力」はグループ全体に共通する基本スキルだった可能性が高いと研究チームは結論づけています。
重厚な鎧とハンマーに頼るだけでなく、シャベルのような足で土を掘り、自ら要塞を築き上げて過酷な白亜紀を生き抜いた装甲恐竜たち。
数千万年前の彼らのしたたかで賢い生存戦略には驚かされるばかりです。














