ヒプシロフォドン Hypsilophodon

名前の由来

高い畝(うね)のある歯

科名

ヒプシロフォドン科

分類

双弓亜綱、鳥盤類、鳥脚類

生息地(発見地)

イギリス、スペイン

時代

約1億3000万〜1億2500万年前(白亜紀前期)

全長

約1.5〜2.3m

体重

約25kg

食性

植物食

解説

白亜紀前期のイギリス。
湿潤な森や平原を、疾風のように駆け抜ける小型の恐竜がいました。

その名は「ヒプシロフォドン」。

全長約1.5〜2.3m、体重25kgほどの小型草食恐竜です。
かつては「イグアノドンの幼体」と誤解され、ある時は「木登りをする恐竜」だと信じられていました。

イグアノドンの子供?発見と命名の歴史

40年間の誤解

ヒプシロフォドンの化石が最初に発見されたのは1849年、恐竜研究の黎明期のことでした。
しかし発見から約40年間、この化石は独立した新種だとは認識されず、当時すでに有名だった「イグアノドンの幼体(子供)」だと誤解されていました。
骨格の特徴が似ていたためです。

誤解の解消と名前の由来

1889年、トマス・ヘンリー・ハックスリーの研究により、イグアノドンとは異なる独自の種であることが認められ、正式に命名されました。
学名の意味は「高い畝(うね)のある歯」。
イグアナの一種(ヒプシロフス)の歯に形状が似ていたことに由来します。

原始的だが完成された「生きた化石」

ヒプシロフォドンは白亜紀前期(約1億2500万年前〜)に生息していましたが、その体には同時代の恐竜と比べて「原始的」な特徴が多く残されていました。

クチバシに残る「歯」

最大の特徴は頭部です。
進化した鳥脚類(カモノハシ竜など)とは異なり、植物を摘み取るクチバシ(前顎骨)の部分にまだ「歯」が残っていました。

植物を摘み取るクチバシの部分にまだ「歯」が残っていた

植物を摘み取るクチバシの部分にまだ「歯」が残っていた

前方の釘のような歯とクチバシで植物を噛み切り、奥歯ですり潰していました。
また、手足の指が5本ある点も原始的であり、当時としても「生きた化石」のような存在でした。

逃げるための脚と尻尾

彼らはネオヴェナトルなどの凶暴な肉食恐竜と同じ地域に生息していました。
鎧を持たない彼らの唯一の防御手段は「逃げること」。
膝から下が太ももより長い「スプリンターの脚」と、全速力で走る際に舵となる「硬い尾」を持っていました。

膝から下が太ももより長い「スプリンターの脚」と、全速力で走る際に舵となる「硬い尾」を持っていた。

膝から下が太ももより長い「スプリンターの脚」と、全速力で走る際に舵となる「硬い尾」を持っていた。

現代のガゼルのように、その俊敏さで生き抜いていたのです。

「木登り恐竜」説の真実

ヒプシロフォドンを語る上で欠かせないのが、かつての「樹上生活説」です。

昔の図鑑の定番

発見当初、足の指の構造などから「木の上で生活していた」と考えられ、古い図鑑では木の枝に止まっている姿が描かれていました。

現在の定説

しかしその後の研究で、足の指は枝を掴める構造ではなく、むしろ地上を走るのに適していることが明らかになりました。
現在、この説は完全に否定されており、彼らは地面の草を食べる完全な「地上性」の恐竜であったことが定説となっています。

世界中にいた?「成功したボディプラン」と分類の謎

かつて、ヒプシロフォドンに似た小型恐竜が世界中で発見されたため、「最も繁栄したグループ」だと考えられていました。

並行進化の可能性

しかし近年の研究では、これらは同じグループ(血縁関係)ではなく、それぞれ異なる系統から進化した可能性が高いとされています。
「体が小さく、速く走れる植物食恐竜」というスタイルが生存にあまりに有利だったため、世界中で似た姿(ボディプラン)の恐竜が現れたのです(並行進化)。

ヒプシロフォドンという種自体はイギリス周辺の恐竜ですが、その完成された「逃げるための体」がいかに優秀だったかを物語っています。

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