セルマサウルス Selmasaurus

名前の由来

セルマのトカゲ

科名

モササウルス科

分類

爬虫綱、双弓亜綱、有鱗目

生息地(発見地)

アメリカ、日本

時代

白亜紀後期

全長

約3〜5m

食性

魚食

解説

セルマサウルスは、白亜紀の海に生息していた絶滅海棲爬虫類(モササウルス科プリオプラテカルプス亜科)の一属です。
これまでアメリカ合衆国のアラバマ州やカンザス州から化石が産出していましたが、近年、太平洋を隔てた日本の鹿児島県からも発見例が報告され、注目を集めました。

セルマサウルスとは?基本情報と身体的特徴

セルマサウルスには、現在「セルマサウルス・ラッセリ(S. russelli)」と「セルマサウルス・ジョンソニ(S. johnsoni)」の2種が知られています。

小型で歯の少ない捕食動物

全長は3〜5mと、モササウルス科の中では小型の捕食動物でした。
また、モササウルス科にしては歯の本数が比較的少なく、発見当初は「最も歯の本数が少ない属」とされていました。

特異な頭骨の解剖学的特徴

プリオプラテカルプス亜科に分類されるセルマサウルスは、頭骨に独自の特徴を持っています。
ポルシンとエバハート(2008年)の研究により、他の属と区別するための以下の特徴が提唱されています。

アブミ骨周辺の構造

アブミ骨上の突起が方形骨の高さの約半分まで突出し、杭状のアブミ骨下突起に接するが癒合はしていない。

頭頂部の形状

中央が潰れた半長方形の頭頂部が、前方に広がって後方に縮み、末端で分岐する「傍矢状隆起」をなす。

骨の接合

頭頂骨の後腹側中央突起が、上後頭骨に細長く接する。

上側頭骨と頭頂骨

上側頭骨の前方中央突起が頭頂骨の枝に潰され、その範囲が頭頂骨の枝全体に及ぶ。

化石発見と研究の歴史:アメリカでの発掘劇

セルマサウルスの研究は、1970年代のアメリカから始まりました。

S. ラッセリの記載と地層の特定

セルマサウルスという名前は、1975年に地質学者サミュエル・ウェイン・シャノンの修士論文で初めて記載されましたが、長らく非公式な名前(裸名)とされていました。
その後、1988年にライトによって公式に記載されました。
タイプ標本はアラバマ州地質調査所(後にアラバマ州自然史博物館へ移管)に所蔵され、不完全ながらも保存状態の良い頭骨や頚椎などが含まれています。
種小名の「ラッセリ」は、古生物学者デイル・ラッセルにちなんで命名されました。

発見当初は正確な地層が不明でしたが、1998年にケイトリン・R・キアナンが母岩の微小プランクトンを抽出し、セルマ層群ムーアビル・チョーク累層の下部カンパニアンの地層に由来することが判明しました。
この動物相において、本標本は群集の0.3%を占める極めて希少な要素でした。

新種 S. ジョンソニの発見

1996年、カンザス州西部のニオブララ累層(サントニアンまたはカンパニアン)で、スティーブ・ジョンソンらによって保存状態が極めて良好な頭骨と体骨格が発見されました。
スタンバーグ自然史博物館に所蔵されたこの化石は、10年以上の研究の末、2008年に新種「セルマサウルス・ジョンソニ」と同定されました。
この発見により、セルマサウルスの解剖学的情報の理解が深まり、地理的・時間的な生息範囲も大きく拡大しました。

日本(鹿児島県)での大発見!時空間分布の更新

北米固有と思われていたセルマサウルスですが、太平洋を越えた日本でも劇的な発見がありました。

2022年7月、鹿児島県薩摩川内市の下甑島(しもこしきしま)に分布する上部白亜系から、セルマサウルスの方形骨が発見されたのです。
この化石は、2025年7月に小西卓哉氏によって一般メディア向けに発表されました。

この発見が極めて重要な理由は以下の2点です。

  • 北アメリカ大陸以外で発見された初のセルマサウルス化石であること。
  • 既知の標本よりも300万年新しい時代の地層から産出したこと。

これにより、セルマサウルス属の時空間分布のデータが大きく更新されることとなりました。

セルマサウルスの分類と近縁種

ライトとシャノンは、セルマサウルスを頭蓋底を通る循環系の形態に基づき、モササウルス科の「プリオプラテカルプス亜科」に分類しました。

このグループには、プラテカルプス、プリオプラテカルプス、エクテノサウルスといった属が含まれています。
セルマサウルスはエクテノサウルスに最も近縁である可能性がありますが、頭骨はエクテノサウルスよりも「遥かに短く頑強」であるという明確な違いがあります。

今後、新たな標本が発見されることで、セルマサウルスに関する理解がさらに深まることが期待されています。

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