プリオサウルス Pliosaurus

陸上動物を凌駕する巨大な頭部と顎

プリオサウルスは、その巨大な頭部と強靭な顎で知られています。
頭骨の大きさは、首長竜の常識をはるかに超えていました。

史上最大級の頭部と体型

プリオサウルスは、首が短く、大きな顎を持つプリオサウルス科に含まれます。
頭骨の長さが最大2.5mにも達すると推定された標本も知られており、2009年に発掘された個体は、頭骨の長さだけで2.4m、そして体長はなんと16mにも及んだとされています。

形状

首長竜としては首が異様に短く、体はビール瓶のように丸々としており、モササウルスに似た体型が特徴です。
首が短く頭骨が大きいという特徴から、獲物に一気に噛み付くような獰猛なハンティングスタイルを採っていたと考えられています。

強靭な顎とホホジロザメに似た脳

プリオサウルスの顎の力は非常に強く、海の生物が満場一致で恐れるほどの破壊力を持っていました。

武器

列状の鋭い歯と頑丈な顎を駆使し、魚類、頭足類、そして自身と同じ海棲爬虫類までも襲って食べていたとされています。
捕食対象として、魚、アンモナイトはもちろん、大型のイカなども含まれていました。

フンケイ種の驚異

ノルウェーで発見されたプリオサウルス・フンケイは、その脳が今日のホホジロザメと似た形と比率であったことが判明しており、高い捕食能力と戦略性を持っていたことが裏付けられています。

進化上の謎：なぜ首が短くなったのか？

プリオサウルスが首長竜の仲間でありながら、首が短いという事実は、進化上非常に興味深い点です。

祖先から分かれた二つの主流

首長竜は、進化の過程で二つの主流な枝に分岐しました。

長頸竜

エラスモサウルスのように、首が長いグループです。
彼らは浅い海に生息し、海底のエサをあさったり、海面に首をのばして小型の獲物を狙ったりしていました。

プリオサウルス類

短い首に巨大な頭部を持ち、深い海で大型の獲物を狙うことに特化したグループです。
プリオサウルスは首を短く、頭骨を巨大化させることで、大型の獲物を仕留める強食者というニッチを確立しました。

「よりトカゲに近い生き物」という名の由来

プリオサウルスの名付け親は、「恐竜」という言葉を作ったリチャード・オーエンです。
プリオサウルスの歯の形がワニに近いことから、プレシオサウルスに比べて「よりトカゲに近い生き物」という意味のギリシャ語から名前が付けられました。
これは、プリオサウルスがプレシオサウルス類とワニ類をつなげる、進化上重要な存在として位置づけられていたことを示しています。

海中での高速遊泳

プリオサウルスは、頑強なつくりの4本のヒレをもっていました。
ヒレの骨の分析結果によれば、彼らは主に前肢を使って遊泳し、後肢は獲物を追うときなどに加速するための推進力に用いていたことが示されています。
射程距離に獲物が入った瞬間、ハヤテのように泳いで、あっと言わせる間もなく獲物に食らいつくほどの瞬発力に長けていました。

プリオサウルスは、長らくジュラ紀の海を支配していたリオプレウロドンと共存していましたが、熾烈な生存競争の末に彼らの生息域を奪取し、広く繁栄したとされています。