テリジノサウルス Therizinosaurus
名前の由来
大鎌トカゲ
科名
テリジノサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、獣脚類
生息地(発見地)
モンゴル、カザフスタン
時代
8300万~7000万年前(白亜紀後期)
全長
約8〜11m
体重
約5トン
食性
植物食
Jurassic
Park / World シリーズ登場恐竜
ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 における活躍
本作にて、ついにシリーズ初登場を果たしたテリジノサウルス。
バイオシン・サンクチュアリに生息するこの雌の個体は、全身が羽毛で覆われた姿と、野球のバットほどもある長く鋭い爪を武器に、物語の重要な局面で強烈なインパクトを残しました。
本作に登場するテリジノサウルスは、本来は植物が主食でありながら、非常に縄張り意識が強く攻撃的な性格として描かれています。
その理由は視力が弱いためで、視界が悪い分、周囲の動くものに対して過敏に反応し、排除しようとする気性の荒さを持っています。
コウモリやクジラのように独特で不気味な鳴き声を発し、その反響音で周囲の状況を把握しています。
舌打ちのようなクリック音を響かせながら忍び寄る姿は、本作屈指のホラー要素となりました。
劇中では、飛行機事故でバイオシン・サンクチュアリに不時着したクレアを執拗に追いかけました。
息を潜めて水中に隠れるクレアの目前で、偶然通りかかった鹿を一撃で殺害。
武器である鋭利な爪の威力と、縄張りに入った者には容赦しない好戦的な姿を見せつけ、観客に「音を立てたら殺される」という緊張感を与えました。
物語の終盤では、頂点捕食者ギガノトサウルスと対峙し、善戦を繰り広げました。
気絶していたティラノサウルスが目を覚ますまでの間、持ち前の長い爪で時間稼ぎを行いますが、その攻防の中で左手の爪を一本折られてしまいます。
しかし、復活したティラノサウルスがギガノトサウルスに体当たりを食らわせた瞬間、テリジノサウルスが構えた鋭い爪がギガノトサウルスの体を貫き、そのまま絶命させました。
意図せぬ形とはいえ、レジェンド恐竜と協力して最強の敵を倒すという、シリーズ初登場にして最大級の活躍を見せました。
































解説
恐竜の長い歴史の中でも、特に異彩を放つテリジノサウルス。
「大鎌トカゲ」という意味の名を持つこの恐竜は、白亜紀後期のモンゴルやカザフスタンに生息していた大型の獣脚類です。
生物史上最大級の巨大なかぎ爪を持ちながら、その食性は植物食という、矛盾にも似た特徴を持つテリジノサウルス。
かつてはカメや超巨大肉食恐竜と間違えられ、長年にわたり学者たちを翻弄してきた、この謎多き恐竜の全貌に迫ります。
発見と混乱:カメの骨と間違えられた奇怪な化石
テリジノサウルスの最初の発見は、1948年のモンゴル・ゴビ砂漠(ネメグト層)にまで遡ります。
発見されたのは、全長2mにもなる巨大な前肢と爪、そしてわずかに残された後肢と肋骨のみでした。
当時、これほど奇怪な化石は他に例がなく、発見当初は驚くべき誤解が生まれました。
巨大なカメだと思われていた?
テリジノサウルスの巨大なかぎ爪は、現代のオサガメの肋骨に似た形状をしていました。
そのため、発見当初は恐竜ではなく「巨大なカメのような爬虫類の骨」であると間違えられていたのです。
種小名の「ケロニフォルミス」は「カメに似た」という意味であり、当時の復元図では「爪がやたらと長いカメ」として描かれるのが一般的でした。
肉食恐竜説と分類の迷走
カメ説が否定された後も、「アロサウルスのような体格で、この腕のサイズに見合う超巨大な肉食恐竜だったのではないか」という説や、骨の特徴が竜盤類と鳥盤類の両方に似ていたことから、分類不能な新たな生物とされるなど、迷走を極めました。
現在では、これら奇妙な特徴は「植物を食べるための二次的な適応」であることが判明しています。
生物史上最大級の「大鎌」を持つ爪
テリジノサウルスの最大の特徴は、何と言っても前肢の先端に備わった巨大なかぎ爪です。
最大の特徴は前肢の巨大なかぎ爪
腕自体の長さは約2mに達し、その先端にあるかぎ爪は、骨だけで70cm以上にもなります。
生体では角質のさやを含めると90cmを超えていた可能性があり、これは生物史上最大の爪であったと考えられています。
この爪は何に使っていたのか?
この「巨大な鎌」の用途については、現在も議論が続いています。
植物食のための道具説(有力)
枝をたぐり寄せたり、植物をかき集める熊手のような役割。
自衛用の武器説(有力)
同時代のタルボサウルスなどの大型肉食恐竜から身を守るための強力な武器。
アリ塚破壊説
アリ塚を崩して中の虫を食べるため。
近年の研究では、主に植物を食べるための道具として使いつつ、いざという時の自衛手段として機能していた説が有力視されています。
獣脚類の「変わり者」としての奇妙な姿
近縁種(アラシャサウルスやエルリアンサウルスなど)の発見により、テリジノサウルスの全体像がようやく明らかになってきました。
推定全長は8~11m。
そのシルエットは、まるで「セサミストリートのビッグバードに巨大な前肢を付けたような姿」と例えられます。
植物食に適応した「太った体型」
体は、他の獣脚類と比べて樽のようにボリュームがありました。
体は樽のようにボリュームがあった
これは植物を消化する巨大な胃腸を収めるためです。
また、通常の獣脚類が3本指で歩くのに対し、彼らは4本の指を接地させて歩いていました。
これは重量のある体を支えたり、湿地帯を歩くための適応だと考えられています。
肉食恐竜の系譜なのに植物食
彼らは獰猛な肉食恐竜を含む「獣脚類」でありながら、極めて珍しい植物食(または植物食傾向の強い雑食)でした。
鋭い歯の代わりに木の葉形の歯とクチバシを持ち、まるでジャイアントパンダが竹を食べるように進化した「変わり者」なのです。
その動きや生活様式は、現代のナマケモノに近かったのではないかという説もあります。
当時の環境と生態
テリジノサウルスが生息していた白亜紀後期のゴビ砂漠周辺は、現在とは異なり、温暖で湿潤な豊かな自然環境が広がっていました。
そこには背の高い植物も生い茂っており、テリジノサウルスの長い首と大きな体は、現在のキリンのように高い場所の葉や実を食べるのに適していたことでしょう。
彼らはその長い首と巨大な爪を使い、豊かな植物資源を独占的に利用していたのかもしれません。
絶えない謎と今後の展望
なぜこのような独特な姿に進化したのか、その謎はまだ多く残されています。
羽毛の有無について
復元図では羽毛を持った姿で描かれることが多いですが、テリジノサウルス自身の羽毛化石は見つかっていません。
近縁種(ベイピアオサウルス)には羽毛の痕跡がありますが、大型種であるテリジノサウルスの場合、体格や環境を考慮すると、羽毛は限定的だった可能性があります。
日本での発見と未来への手がかり
化石発見はまだ部分的ですが、日本でも「パラリテリジノサウルス」や「フクイヴェナトル」といった近縁種が発見されており、アジア全体での研究が進んでいます。
かつて巨大なカメと間違えられ、今や巨大な鎌を持つ奇怪な植物食恐竜として知られるようになったテリジノサウルス。
その爪が語る真実を知るため、全恐竜ファンが次なる発見に期待を寄せています。