カンタスサウルス Qantassaurus

名前の由来

カンタス(オーストラリアの航空会社)のトカゲ

分類

双弓亜綱、鳥盤類、鳥脚類

生息地(発見地)

オーストラリア

時代

白亜紀前期

全長

約2m

体重

約45kg

食性

植物食

解説

恐竜の名前には身体的特徴や地名にちなんだものが多く付けられますが、中には現代の企業名、それも「航空会社」の名前を冠した極めてユニークな恐竜が存在します。

その恐竜の名は「カンタスサウルス」。

白亜紀前期のオーストラリアに生息していたこの小型恐竜は、翼を持たない二足歩行の恐竜でした。
なぜ空を飛ばない恐竜に航空会社の名が与えられたのか。
そして、現在のオーストラリアとは異なる「極寒の暗闇」という環境をどう生き抜いたのか。
カンタス航空との意外な関係や、南極圏に適応した驚異の生態について解説します。

空を飛ばない「カンタス」のトカゲ:航空会社への恩返し

学名の由来

カンタスサウルスという学名は、直訳すると「カンタスのトカゲ」という意味になります。
「カンタス」とは、オーストラリアを代表する「カンタス航空」のことです。
この一見不思議な命名には、発掘プロジェクトにおける心温まる裏話がありました。

化石輸送への多大な支援

1996年、パトリシア・ヴィッカース・リッチ氏らによって化石が発見されました。
発掘された貴重な化石の輸送や、世界各地での展示会への運搬には、多額の費用と繊細なロジスティクスが必要です。
この時、リッチ夫妻の活動に対し多大な協力と支援を行ったのがカンタス航空でした。

発見者たちはその「御恩」に報いる形で、1999年の正式記載時に企業名を学名に採用しました。
こうして、1億年以上前の恐竜は現代の空の翼の名を背負うことになったのです。

たった一つの「顎」が語る真実

実は、カンタスサウルスと断定されている確実な化石は、発見時の「下顎の骨が1つ」だけです。
全身骨格がないにもかかわらず新種認定された事実は、この顎の骨がいかに特徴的で独自性を持っていたかを物語っています。

小さなカンガルーのような俊足ランナー

機動性に優れた小型恐竜

復元された姿は、全長約1.8mの「小さなカンガルー」のような恐竜です。
植物食恐竜である彼らの生存戦略は「スピード」にありました。
長い尻尾でバランスを取りながら疾走し、鋭い爪で地面を捉えて俊敏に動き回っていたと考えられています。

特徴的な「歯」と分類

唯一の化石である下顎の研究から、独自の特徴が判明しています。
頭部は短くずんぐりしており、口の奥には12本の葉っぱ型の歯が並んでいました。
近縁のヒプシロフォドン類(14本以上)よりも歯が少ないという解剖学的な違いは、独自の進化を示しています。

現在は、オーストラリアや南極で独自の発展を遂げたグループ「エラスマリア」に分類されています。

南極圏の闇を生き抜く適応力

ゴンドワナ大陸の「極夜」

白亜紀前期(約1億1500万年前)、オーストラリアは南極大陸と繋がっており、その位置は「南極圏内」にありました。
冬には太陽が昇らない「極夜(きょくや)」が続き、気温も氷点下近くまで下がる過酷な環境でした。

骨が語る「温血」の証拠

変温動物なら冬眠するはずですが、カンタスサウルスの骨には成長が止まった痕跡(成長停止線)がなく、「年間を通じて成長し続けていた」ことが判明しました。
これは彼らが冬眠せず、自力で体温を維持できる「恒温動物(温血動物)」に近い代謝機能を持っていた証拠です。
彼らは小さな体に熱を宿し、寒さを跳ね除けていました。

闇を見通す巨大な瞳

眼窩(目の穴)が非常に大きく発達していたことも分かっています。
この大きな眼は、冬の長い暗闇や薄暗い森林でわずかな光を捉えるための進化であり、夜行性動物のように暗闇でも活動できたと考えられています。

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