カルノタウルス Carnotaurus
名前の由来
肉食の雄牛
科名
アベリサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、獣脚類
生息地(発見地)
アルゼンチン
時代
約7200万〜6990万年前(白亜紀後期)
全長
約7.5〜9m
体重
約1.35〜2.1トン
食性
肉食
Jurassic
Park / World シリーズ登場恐竜
ジュラシック・ワールド/炎の王国 における活躍
シリーズ初登場を果たした中型肉食恐竜です。
かつてイスラ・ソルナ島に生息していた個体がイスラ・ヌブラル島へ移住し、野生化してたくましく生き続けていました。
公開前から注目され、コアなファンの間ではその登場が大変喜ばれました。
劇中には成体2頭が登場し、序盤と終盤でそれぞれ印象的な(しかし少々不遇な)活躍を見せます。
1頭目は、イスラ・ヌブラル島の火山噴火の際に登場します。
アロサウルスやレクシィ(ティラノサウルス)でさえ逃げ惑う緊急事態の中、空腹だったのか、あるいは喧嘩早い性格だったのか、この個体は逃げずにシノケラトプスの前に立ちはだかりました。
喧嘩をふっかけたものの、シノケラトプスに返り討ちにされ、ターゲットをオーウェンたちに変更します。
しかしその瞬間、乱入してきたティラノサウルスに一撃でノックアウトされ、首を踏み潰されてトドメを刺されました(映画のポスターにも採用された有名なシーンです)。
ようやく掴んだスクリーンでの出番は、レクシィとシノケラトプスの「かませ役」として終わってしまいました。
もう1頭は本土の「ロックウッド・エステート」へ輸送され、終盤に他の恐竜と共に解放されます。
その後、イーライ・ミルズを捕食したティラノサウルスに近づき、こぼれ落ちた足の肉に食らいつきますが、ティラノサウルスに頭突きされ、慌てて逃げ出す様子が描かれました。
実は、マイケル・クライトンによる『ロスト・ワールド』の原作小説(1995年)には既に登場しており、小説版ではカメレオンのような保護色(透過能力)を持つ恐竜として設定されていました。
しかし、映画版ではその設定はなく、通常の肉食恐竜として描かれています。
また、関連作品では事実上のラスボスを務めたこともあり、前作『ジュラシック・ワールド』ではインドミナス・レックスの遺伝子ベースの一つとして名が挙げられていました(つまり、インドラプトルにもカルノタウルスの遺伝子が含まれている可能性があります)。ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 における活躍
予告編にも一瞬だけ姿を見せていましたが、本編では他の恐竜の陰に隠れがちながらも、マルタ島でのシーンを中心に確かな爪痕を残しました。
本編では、マルタ島の闇市場(ブラックマーケット)にある闘技場にて、成体と幼体が登場します。
成体
左の角が折れ、体が焼け焦げた姿をしており、アロサウルスと共に収容されていました。
なお、この傷ついた成体は、元々アニメシリーズ『サバイバル・キャンプ』に登場した個体「ブル」として登場する予定だった模様です。
幼体
同じく闇市場で捕らえられていました。
物語の中盤、シリーズの悪役の一人であるレイン・デラコートがオーウェンに追われている際、アロサウルスとカルノタウルスが収容されているコンテナの鍵を銃撃し、あろうことか2頭を脱走させてしまいます。
解放された成体はその後、広場でアロサウルスと共に密売人や島民を襲撃し、マルタ島の街を一気に地獄絵図へと変えました。
一方、幼体も活躍を見せます。
オーウェンに追い詰められ、誤って小型恐竜の闘技場に落下したレイン・デラコートに対し、その片腕に噛み付きました。
リストロサウルスによる連携や、最終的にとどめを刺したバリオニクスの幼体と共に、作中の悪役の討伐に成功しました。
また、公式の「Dinotracker」での投稿によれば、アメリカ以外でも別個体が確認されています。
ペルーでラマを襲っている姿が目撃されているほか、イギリスで小屋を破壊した痕跡が見つかるなど、世界中にその生息域を広げていることが示唆されています。


































解説
カルノタウルスは、白亜紀後期の南アメリカ大陸(現在のアルゼンチン)に君臨していた肉食恐竜です。
ティラノサウルスやアロサウルスとは一線を画すユニークな特徴を持ち、南半球で独自の進化を遂げたアベリサウルス科を代表する恐竜として知られています。
映画やゲームでも人気の高いこの「角のあるハンター」の驚くべき生態や、謎に満ちた身体的特徴を徹底解説します。
「肉食の雄牛」その名の由来と角の謎
カルノタウルスという学名は、ラテン語で「肉食の雄牛」を意味します。
その名の通り、彼らの最大の特徴は頭部にあります。
縦に長く横につぶれたようなブルドッグを思わせる顔つきで、目の上には左右に突き出た太い角が2本存在しています。
その姿はまさに「トカゲの形をした牛」です。
目の上に左右に突き出た太い角が2本あった
肉食恐竜がこのような角を持つ例は極めて稀であり、その用途は長年の謎とされてきました。
武器として使うには強度が不足しているため、現在では「種内のディスプレイ」として機能していたという説が有力です。
角の大きさはメスを惹きつけるアピールポイントや、オス同士の威嚇に使われたと考えられています。
ティラノサウルス以上に退化した「究極の小手」
カルノタウルスを語る上で欠かせないのが、極端に退化した前肢です。
ティラノサウルスの前肢も小さいことで有名ですが、カルノタウルスのそれはさらに極端で、長さは50cm程度しかありません。
前肢の長さは50cm程度しかない
肘と手首の関節が一体化しており、一見すると二の腕から直接手のひらが生えているように見えます。
しかし、単に退化しただけではありません。
進化した獣脚類の多くが指を減らしている中で、カルノタウルスは原始的な「4本の指」を残しています。
さらに驚くべきことに、腕自体は極小であるにもかかわらず、肩帯は発達しており、肩の可動域が非常に広かったことが判明しています。
この奇妙な前肢の用途については、角以上に謎に包まれています。
地上最速の巨大ハンター?驚異の身体能力と「尾大腿筋」
奇妙な見た目に反して、カルノタウルスは恐るべき身体能力を秘めたハンターであった可能性が高いことが、近年の研究で明らかになっています。
2011年の研究によると、カルノタウルスは全ての大型獣脚類の中でもトップクラスのスピードを誇る「最速の恐竜」の一種であったとされています。
その根拠となるのが、尻尾から太ももにかけて伸びる筋肉「尾大腿筋(びだいたいきん)」の大きさです。
研究によると、カルノタウルスの尾大腿筋は、地球上の全動物で最大級であるとされています。
尾大腿筋が地球上の全動物で最大級
この強靭な筋肉が爆発的な推進力を生み出し、まるで雄牛のような凄まじい突進力を発揮していたと考えられます。
ただし、この強大な筋肉と引き換えに尾の柔軟性は低く、小回りはあまり利かなかったと推測されます。
圧倒的な直線スピードで一気に距離を詰め、強烈な一撃を見舞うスタイルを得意としていたのかもしれません。
大型獣脚類の中でもトップクラスのスピードを誇っていた
羽毛全盛の時代における「鱗」の証明
近年、「肉食恐竜には羽毛が生えていた」という説が一般的になりつつありますが、カルノタウルスに関しては「ほぼ間違いなく羽毛が生えていなかった」と断言されています。
これは、カルノタウルスの化石発見状況が極めて良好だったことに起因します。
1985年にパタゴニアで発見された化石には、明確な「鱗のある皮膚」の印象(痕跡)が残されていました。
これにより、カルノタウルスは爬虫類らしい鱗に覆われた肌を持っていたことが確定しており、アベリサウルス科の研究において極めて重要な資料となっています。
アベリサウルス科の最大級種
カルノタウルスの全長は約7.5〜9m、体重は1.35〜2.1トンと推定されています。
かつてはアベリサウルス類の中でも最大級とされていましたが、近年ではピクノネモサウルスという種がライバルとして浮上しています。
いずれにせよ、カルノタウルスがこのグループを代表する巨体を持っていたことに変わりはありません。
全身骨格の保存状態が良く、皮膚の痕跡まで残っていたおかげで、アベリサウルス科の中では特に研究が進んでいるカルノタウルス。
その特異な姿と能力は、恐竜の進化がいかに多様で、私たちの想像を超えたものであるかを物語っています。