イリテーター Irritator

名前の由来

苛立たせるもの

科名

スピノサウルス科

分類

双弓亜綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

ブラジル

時代

1億1000万年前(白亜紀前期)

全長

約6〜8m

体重

約1トン

食性

肉食

解説

イリテーターは、白亜紀前期のブラジルに生息していたスピノサウルス科の魚食性恐竜です。
その名は「苛立たせるもの」を意味し、古生物学界でも非常にユニークなエピソードとして知られています。

苛立ちから生まれた名前

イリテーターが発見されたのは1990年ごろ。
ブラジルで化石の違法な売買を行っていた密売人が、頭の化石を改造して売っていたのをドイツの学者が発見したのが始まりでした。
学者が購入した頭骨は、人工的な傷や塩酸で溶かされた跡、不自然に接着された部分など、ひどい改悪がなされていたのです。
これに激怒した学者たちは、「苛立たせるもの」を意味する『イリテーター』と命名しました。

姿形と食性

イリテーターは、細長い円すい形の歯や、細長く突き出た顔がスピノサウルスに似ていますが、鼻先がすらりとしている点に違いがあります。
頭部は翼竜に似ており、トサカのようなものがありました。
口はワニのように細長く、魚を捕食するのに適した歯を持っていました。
化石が、翼竜や魚の化石が多く見つかる地層から発見されていることから、イリテーターは半水棲恐竜で、浅瀬などで魚を捕食していたと考えられています。

しかし、彼の歯が刺さったと思われる翼竜の骨が見つかっていることから、必要に応じて他の動物も食べていたとされています。
また、スピノサウルス一族の中では一番小さく、体格はバリオニクスにそっくりだったようです。

新たな発見と「勇者」

長年、頭骨しか見つかっていない謎多き恐竜でしたが、後にアンガトゥラマがイリテーターと同一種だと判明しました。
このことで、爪や指の骨、骨盤の存在が知られるようになり、その全体像が明らかになりつつあります。
ちなみに、アンガトゥラマはトゥピー語で「勇者」を意味します。
苛立ちから命名されたイリテーターとは対照的で、何とも皮肉な話です。

この数奇な発見の経緯は、古生物学界の闇を物語るとともに、イリテーターが持つユニークな特徴を現代に伝える重要な手がかりとなっています。

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