オルニトレステス Ornitholestes

名前の由来

鳥泥棒

科名

コエルルス科

分類

爬虫綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

アメリカ

時代

約1億5400万年前(ジュラ紀後期)

全長

約2m

体重

約12~20kg

食性

肉食

解説

恐竜研究の長い歴史において、発見から一世紀以上経過してもなお、多くの謎に包まれ続けている恐竜がいます。
その代表格が、中生代ジュラ紀後期の北アメリカ大陸に生息していた小型肉食恐竜、「オルニトレステス」です。

全長約2m、体重12~20kgのこの恐竜は、図鑑や博物館ではおなじみの存在ですが、その実像は厚いベールに包まれています。
なぜなら、1900年の発見以来、人類に対してたった一度しかその姿を見せていない(化石が1体しか見つかっていない)からです。

100年以上、たった1体の化石

モリソン層からの贈り物

1900年、アメリカ・ワイオミング州の有名な化石産地「ボーン・キャビン採石場(モリソン層)」で、オルニトレステスの物語は始まりました。
発見された骨格標本は、頭骨を含めてほぼ完全な状態で保存されていました。
通常であれば研究が飛躍的に進むはずですが、大きな落とし穴がありました。

分類上の孤立と「孤独」

実は、最初に発見されたこの1体以外、オルニトレステスの確実な化石は、現在に至るまで追加で発見されていないのです。
世界で最も調査が進んでいるモリソン層で見つかったにも関わらず、2体目が見つからない異常事態。
比較検討できる標本がないため、詳細な研究は困難を極めており、近似種さえ特定できていません。

「鳥泥棒」という名の誤解と真実

学名の由来

学名「オルニトレステス」は、ギリシャ語の「鳥(Ornis)」と「泥棒・略奪者(Lestes)」を組み合わせた造語で、「鳥泥棒」という意味です。

始祖鳥捕食説の否定

命名当時、その俊敏な体つきと手を握れる構造から、同時代の始祖鳥(アーケオプテリクス)を捕食していたと推測され、この名前が付けられました。

しかし、その後の研究でこの説は否定されています。
オルニトレステスは北米産ですが、始祖鳥はヨーロッパ産であり、生息地が地理的に大きく離れているため共存の証拠はありません。
現在では、「鳥泥棒」という名は当時の学者たちの想像力が生んだロマンの残滓とされています。

狩りに特化した身体能力

オルニトレステスの全長は約2m。
しかし、その身体構造には獲物を確実に仕留めるための高度な適応が見て取れます。

「手」のように使える器用な前肢

腕が発達しており、前肢の指は長くほっそりとしていました。
指の先端には鋭いカギ爪があり、「手の3本の指をある程度握ることが可能」であったと考えられています。
このグリップ力を活かして、獲物となる小動物を容易に掴むことができました。

ガッシリかつ軽量なボディ

体つきは筋肉質でガッシリしていましたが、頭骨は軽量で、長い尾が走行時のバランサーとなっていました。

頭骨は軽量で、長い尾が走行時のバランサーとなっていた。

頭骨は軽量で、長い尾が走行時のバランサーとなっていた。

パワーとスピードを兼ね備えた彼らは、ジュラ紀の森を疾走する優秀なハンターでした。

羽毛の可能性

近縁のコエルロサウルス類から羽毛が見つかっているため、オルニトレステスも羽毛を持っていた可能性が高いとされています。
しかし、たった1体の化石からは痕跡が見つかっておらず、確証は得られていません。

「骨のトサカ」の誤解と真実

変わりゆく復元図

古い図鑑では、鼻の上にサイのような「骨のトサカ」が描かれていることがありますが、最新の図にはありません。
これには理由があります。

鼻骨の謎と現在の解釈

かつては鼻の上に骨質のトサカがあると考えられていましたが、再調査により、これは化石化の過程で鼻の骨が折れて変形したものを誤認した可能性が高いことが判明しました。
現在の学説では、「少なくとも骨でできたトサカはなかった」とされています。

現在の学説では、「少なくとも骨でできたトサカはなかった」とされている。

現在の学説では、「少なくとも骨でできたトサカはなかった」とされている。

ただし、軟組織(肉や皮膚)のトサカがあった可能性までは否定されていません。

ジュラ紀の生態系における役割

彼らは自慢のスピードを活かして森や平原を走り回っていました。

自慢のスピードを活かして森や平原を走り回っていた

自慢のスピードを活かして森や平原を走り回っていた

主な獲物は、名前のような「鳥」ではなく、初期の哺乳類や昆虫、トカゲなどの小動物、あるいは他の恐竜の卵やヒナなどでした。

アロサウルスなどの大型恐竜が闊歩するジュラ紀の世界において、彼らは小型の獲物を俊敏に捕らえることで、競合を避け、独自のニッチ(生態的地位)を確立していたようです。

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