シアッツ・ミーケロルム Siats meekerorum

名前の由来

「シアッツ」はユタ州先住民のユト族の伝承に登場する人喰いの怪物の名前、「ミーケロルム」は種の確定に貢献したミーカー家に由来して命名された

分類

双弓亜綱、竜盤目、獣脚類

生息地(発見地)

アメリカ

時代

約9800万年前(白亜紀後期)

全長

幼体で約9〜12m

体重

幼体で約4トン

食性

肉食

解説

シアッツ・ミーケロルムは、白亜紀後期、約9,800万年前に北米大陸に生息していた巨大な肉食恐竜です。
その名は、ユタ州先住民ユト族の伝承に登場する大食いの怪物「シアッツ」に由来します。
この恐竜の発見は、「完成されたティラノサウルス・レックスが台頭する以前の北米大陸の生態系の頂点に誰がいたのか」という長年の空白を埋める、革命的なものとなりました。

驚異のサイズと系統論争

シアッツの化石は、ユタ州東部のシーダーマウンテン累層で、テキサス大学の学生だったリンジー・ザノ氏が偶然発見しました。

未成熟で全長12m:潜在的な世界最大級

発掘された化石は、脊椎の癒合が完全ではない未成熟な幼体のものでしたが、そのサイズは既に驚異的でした。

体長・体重

幼体でさえ、最低でも全長約9〜12m、体重約4トンと推測されました。
これは当時の北アメリカで発見された肉食恐竜の中で3番目に入る大きさで、サウロファガナクスやアクロカントサウルスといった既存の巨大恐竜に匹敵していました。

身体的特徴

ティラノサウルスに比べて先のとがった、すっきりした頭部を持っていました。

ティラノサウルスでおなじみの短い2本指ではなく、比較的長い3本指の前肢をもち、獲物を捕らえるのに役立ったと考えられています。
ユト族の伝承に登場する大食いの怪物という名が示す通り、その高い捕食能力が評価されています。

今後の可能性

研究チームは、成体はさらに大きかった可能性があり、「今後の発見次第で、シアッツの成体が既知の肉食恐竜では世界最大級であったことが明らかになるかもしれない」と述べています。

系統をめぐる論争:アロサウルス上科か?

シアッツはアロサウルス上科に属するネオヴェナトル科だと考えられていますが、その後の研究ではメガラプトル類である可能性も指摘されており、シアッツの分類は未だに古生物学におけるホットな論争点となっています。

ティラノサウルスの暗黒時代を支配した怪物

シアッツの発見が最も重要視されるのは、その生息年代と生態系における地位です。
彼は、ティラノサウルスが北米大陸の頂点捕食者に躍り出る直前の「空白の時代」を埋めました。

王者の座の支配とティラノサウルスの低迷

頂点捕食者の地位

シアッツが生きていた約9,800万年前の時点で、彼は疑いなく頂点捕食者の地位に就いていました。

ティラノサウルスの暗黒時代

後に恐竜の王となるティラノサウルスの祖先(モロスなど)も同時期の地層から産出していますが、彼らは全長2m程度の小型の属であり、シアッツなどの大型恐竜から身を隠し、逃げ回る低次の消費者の地位を占めていたことが判明しました。

進化の歴史

シアッツの発見は、アロサウルスの系統が少なくともさらに1,000万年は頂点に君臨し続けたことを示しており、ティラノサウルスが食物連鎖の頂点に立てるようになったのは、シアッツなどの恐竜が姿を消した後のことであるという進化の歴史が明らかになりました。

未解明の全貌と今後の展望

見つかっている骨格は不完全で、しかも幼体のものだったため、成熟したシアッツの正確な大きさははっきりとはわかりません。

今後の成体の化石の発見や研究の進展が、この巨大な恐竜の全貌を明らかにする鍵となるでしょう。

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