ウタツサウルス・ハタイイ Utatsusaurus hataii

名前の由来

属名は発見地の宮城県南三陸町(旧歌津町)、種小名は故・畑井小虎氏にちなんで命名された。

科名

ウタツサウルス科

分類

爬虫綱、双弓亜綱、魚鰭類

生息地(発見地)

日本

時代

2億5000万〜2億4500万年前(三畳紀前期)

全長

約2~3m

体重

不明

食性

魚食

解説

ウタツサウルス・ハタイイは、約2億5,000万年前の前期三畳紀の海に登場した、最古級の原始的な魚竜類(魚鰭類)です。
その化石は1970年、宮城県南三陸町(旧歌津町)から発見され、属名は発見地の旧歌津町に、種小名は故・畑井小虎氏にちなんで名付けられました。

「竜」とつきますが、恐竜とはまったく別に海で進化した爬虫類であり、古生代末の史上最大の大量絶滅を生き抜いたグループから、後の海で大繁栄する魚竜類へと進化する過程を示す、非常に重要な存在です。

「トカゲ」の面影を残す原始的な特徴

ウタツサウルスは、後の時代に現れる魚竜類と比べ、陸生だった祖先の面影を強く残した「中間的な体」をしていました。
全長は2m弱から最大3mに達し、陸上動物と進化した魚竜との間の特徴を併せ持っています。

骨格と四肢の特徴:進化の移行段階

原始的なヒレ

トカゲのように細長い胴体と、前ひれとほぼ同じ大きさの後ろひれを持っていました。
これは、後の魚竜で前肢が著しく長くなるのとは対照的です。

骨盤の痕跡

進化の最初期であるため、後の魚竜では失われる骨盤(腰帯)の痕跡がわずかに残っていました。
腰帯と脊椎の繋がりは弱かったものの、陸上動物の特徴をわずかに残していました。

四肢の均等性

上腕骨と大腿骨がほぼ同じ長さであり、後の魚竜(上腕骨が長い)と陸上有羊膜類(大腿骨が長い)という両極端な傾向の中、移行段階の特徴を示しています。

頭部と遊泳のスタイル

頭部形態

頭骨は丸みを帯びた派生的魚竜よりも細く、鼻面が細長く、目は大きかったことが分かっています。
口には獲物を捕らえるのに適した鋭い歯が並んでいました。

遊泳方法

進化した魚竜が持つ背びれや十分な尾びれはまだなく、ウナギのように長い体をくねらせて泳いでいたと推定されています。

恒温性への適応と分類をめぐる論争

ウタツサウルスは原始的な特徴を持つ一方で、骨の組織やシミュレーションの研究から、既に恒温性の代謝を獲得し、活発に外洋を泳ぎ回っていたのではないかと考えられています。
この事実は、魚竜類が前期三畳紀の非常に短い期間で、劇的な水生適応を遂げたことを示す重要な証拠となっています。

進化論争

1998年、カリフォルニア大学バークレー校の藻谷亮介らの研究チームは、ウタツサウルスがトカゲに類似した双弓類に近縁であり、魚鰭類がトカゲ・ヘビ・ワニの遠い親戚にあたるという系統解析を提唱しました。
しかし、2013年には別の研究チームによって、魚鰭類は単系統であり、ウタツサウルスがその基盤的な分類群であるという報告がされています。

貴重な化石の発見場所と歴史

ウタツサウルスの化石は、宮城県南三陸町(旧歌津町)や同県雄勝町(現石巻市)で略完全な骨格が発見されています。
南三陸町はペルム紀からジュラ紀の地層が多く分布しており、ウタツサウルスは日本近海で生息していた魚竜の中でも最も古い種として、その後の魚竜の進化の歴史を解き明かす鍵となっています。

ホロタイプは東北大学総合学術博物館に所蔵されていますが、1990年には歌津町館崎の発掘現場で化石の一部が盗掘される事件も発生しました。
現在、歌津町館崎の発掘現場は化石と共に国の天然記念物に指定されています。

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