ブラキオサウルス Brachiosaurus
名前の由来
腕トカゲ
科名
ブラキオサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、竜脚形類
生息地(発見地)
アメリカ、タンザニア
時代
約1億6100万~1億4600万(ジュラ紀後期)
全長
約25m
体重
約40~70トン
食性
植物食
名前の由来
腕トカゲ
科名
ブラキオサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、竜脚形類
生息地(発見地)
アメリカ、タンザニア
時代
約1億6100万~1億4600万(ジュラ紀後期)
全長
約25m
体重
約40~70トン
食性
植物食
解説
ブラキオサウルスは、1900年の発見以来、長きにわたり史上最大の恐竜として世界にその名を知らしめてきました。
現在では、アルゼンチノサウルスやセイスモサウルスといった、より巨大な恐竜が発見されその座を譲りましたが、その圧倒的な存在感と人気は今も衰えることはありません。
ブラキオサウルス
その学名「Brachiosaurus」は、ラテン語で「腕トカゲ」を意味する言葉からきています。
この名前は、後肢に比べて非常に長い前肢を持つユニークな特徴に由来しており、ジュラ紀後期に北米やアフリカに生息していました。
アフリカで発見された個体はジラフタイタンと呼ばれることもあります。
超巨大な体と驚くべき身体構造
ブラキオサウルスは、体長およそ25m、体重は最低でも23トン、最大では50トンにもなるといわれる超大型の竜脚形類です。
これは現代のシロナガスクジラに匹敵するサイズで、この巨体がわずか30年ほどで成長したと考えられています。
もし現代にこの巨人が生きていたら、頭を目いっぱいもち上げるとビルの5階の窓をのぞくことができたでしょう。
その最大の特徴は、非常に長い首と、後肢よりもはるかに長い前肢です。
ほとんどの竜脚形類は後肢の方が長いのですが、ブラキオサウルスは前肢が長く、この特徴が名前の由来にもなっています。
非常に長い首と、後肢よりも長い前肢。
首の謎:上がらない首と「吊り橋」理論
かつての復元画では、たっぷり筋肉のついた太い首を垂直に持ち上げている姿が描かれていました。
しかし、ブラキオサウルスの首の骨をコンピューター断層撮影(CT)で調べたところ、その内部はほとんどスカスカの空洞になっていることがわかったのです。
まるで薄い骨でできた風船のような構造で、最も薄い部分はハガキよりも薄かったとされています。
これほど骨が薄いと、大きな筋肉をつけることもできません。
では、どうやって首を支えていたのでしょうか。
ブラキオサウルスのような超大型竜脚形類の体は「吊り橋」のような構造だったと考えられています。
後肢と骨盤を支柱として、ワイヤーに相当する強靭な靭帯で、前方の首から後方の尾までの骨を吊り下げていたというのです。
靭帯で首から後方の尾までの骨を吊り下げていた
この構造では、首はほとんど動かすことができず、頭を上に持ち上げるのは不可能だったと考えられています。
肩の高さ(地面から約5m)でほぼ水平に保つのが限度だったとされ、この高さでもキリンと同等程度の高さの木に届いていたことになります。
もし無理に首を高く上げていたとすれば、脳に十分な血液を送ることができず、失神してしまった可能性も指摘されています。
長い首の本当の理由:繁殖のためのディスプレイ
機能性を犠牲にしてでも骨を軽く、筋肉を最小限にする。
なぜそこまでして体を大きく、首を長くする必要があったのでしょうか。
以前は、高い木の葉を食べるためだと考えられていましたが、多くのハンディキャップ(1回の呼吸に数十秒、食べたものが胃に届くまで時間がかかる、激しい運動ができないなど)を考えると、この説は説得力を失いました。
ヒントとなるのは、子供のうちはそれほど首が長くないという事実です。
子供にはなく、大人になるにつれて発達する特徴は、多くの場合、繁殖のための性的なアピールだと考えられます。
ブラキオサウルスの世界では、首が長ければ長いほど異性にモテたのかもしれません。
実生活ではメリットがほとんどなくデメリットばかりであるにもかかわらず、首を長く進化させたのは、生存よりも繁殖を優先した結果だったと考えられているのです。
一方で、水を飲むために首を下げる必要があったことから、首の下側には首を下げるための筋肉が多少はつく構造になっていました。
首の下側の筋肉を縮めることで首を下げ、筋肉を緩めるとまた自然に元の位置まで上がるという、上下動をさせていたのでしょう。
水を飲むブラキオサウルス
食事と社会性、そして化石の希少性
ブラキオサウルスは草食で、口先が下を向いており、分厚いくちばしで植物を摘み取り、奥歯ですりつぶして食べていたと考えられています。
重さ1トン近くにもなる頭を上に持ち上げることは不可能だったため、丈の高い植物は食べられなかったとされています。
その巨大な体と、低栄養な植物を食べる食事法から、とにかくたくさん食べ続けなければなりませんでした。
しかし、慣性恒温性という仕組みによって燃費がよかったため、ゾウよりもはるかに巨大でも、ゾウ並みの食事量(1日20時間程度)で体を維持することができたと考えられています。
ブラキオサウルスは、かつて水中生活者とされた時期もありましたが、現在では完全な陸生動物だったことが判明しています。
彼らの足跡が多数密集した状態で発見されることから、何百頭もの大群をつくって移動していたと考えられています。
彼らは、食料である植物が豊富な場所を、ゆっくりと食べ歩きながら暮らしていました。
群れで移動するブラキオサウルス
やみくもに移動するのではなく、決まった経路を一巡し、元の場所に戻ってくる頃には植物が再び育っているという合理的なサイクルを維持することで、食いはぐれることなく1億年以上にもわたって繁栄を続けることができたのです。
これほどの巨体を持つブラキオサウルスですが、頭骨はあまり大きくなく、長さも約50cm程度でした。
敵が現れた場合、この小さな頭部で戦うことはせず、長い尾を武器として使用していたと言われています。
ジュラ紀後期に繁栄したブラキオサウルスの化石は、発見された数が非常に少なく、ジュラ紀後期の地層以外ではほとんど見つかっていません。
しかし、近縁種の化石が白亜紀前期の地層でも発見されたことから、ブラキオサウルス類の恐竜はジュラ紀以降も繁栄していたことが確認されています。
この偉大な「腕トカゲ」は、その高い知名度とは裏腹に、まだ多くの謎に包まれています。
今後、新たな化石の発見や研究によって、その姿はさらに更新されていくことでしょう。