ブラキオサウルス Brachiosaurus
名前の由来
腕トカゲ
科名
ブラキオサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、竜脚形類
生息地(発見地)
アメリカ、タンザニア
時代
約1億6100万~1億4600万(ジュラ紀後期)
全長
約25m
体重
約40~70トン
食性
植物食
名前の由来
腕トカゲ
科名
ブラキオサウルス科
分類
双弓亜綱、竜盤類、竜脚形類
生息地(発見地)
アメリカ、タンザニア
時代
約1億6100万~1億4600万(ジュラ紀後期)
全長
約25m
体重
約40~70トン
食性
植物食
解説
長い首と尻尾を持つブラキオサウルスは、ジュラ紀後期に北米やアフリカに生息していた竜脚形類です。
アフリカで見つかっているブラキオサウルスは、別の名前(ジラフタイタン)で呼ばれることもあります。
特徴は何と言っても巨大なことです。
体長は約25mと、シロナガスクジラ並みの大きさで、首の長さは9mほどもあります。
もしも、現在この巨人が生きていたら、頭を目一杯もち上げると、ビルの5階の窓をのぞくことができたでしょう。
ブラキオサウルスがこの高さまで成長するには30年ほどかかると考えられています。
成体のブラキオサウルスは、現在のキリンのように高い木の梢(こずえ)まで首を伸ばし、葉を食べていたのでしょう。
ブラキオサウルス
ほとんどの竜脚形類は前肢より後肢が長いのに対して、ブラキオサウルスは前肢の方が後肢より長くなっており、これは名前の由来にもなっています。
おそらくこれは異性へのアピールで、自分の体をより高く、大きく見せるためだったのではないかと考えられています。
頭の上部には特徴的な膨らみがあり、ここに鼻の穴があったと考えられています。
口先が下を向いているので、鼻の穴は前を向くようになっていたはずです。
最近になって竜脚類の鼻の穴は頭のてっぺんではなく、口の前にあったという説が提唱されていますが、証拠は不明です。
風船のような首の骨
首を前に伸ばしたブラキオサウルスの模型をつくると、長い首が重くなりすぎてバランスが取れず、前に倒れてしまいます。
実際のブラキオサウルスがそうならないのは、首が軽く、逆に体の後ろが重くなるようにできているからです。
ブラキオサウルスの首の骨をコンピューター断層撮影(CT)で調べてみると、中がほとんどスカスカの空洞になっていることがわかります。
そのため、首は軽くなり、一方で足や尻尾の骨はちゃんと中が詰まっているので、重心は後ろになるのです。
この首の骨は、子供のうちは中が詰まっているのですが、成長とともに空洞化していったと考えられています。
大人になると、首の骨の内部はほとんど空洞ばかりになり、表面や内部の構造は非常に薄く、もっとも薄い部分はハガキよりも薄くなります。
大人のブラキオサウルスの首の骨は、薄い骨でできた風船のようなものでした。
これほど骨が薄いと、大きな筋肉をつけることもできません。
したがって、首には筋肉がほとんどなかったと考えられています。
昔の復元画では、たっぷり筋肉のついた太い首になっていますが、実際にそれだけの筋肉をつけて動かしたら薄い骨が壊れてしまいます。
では、どうやって首を支えていたのでしょうか。
骨と骨をつなぐ靱帯はあったはずなので、おそらくほぼ靱帯だけで腰から首にかけての骨を支えていたと考えられています。
靱帯だけで腰から首にかけての骨を支えていた
ブラキオサウルスのような超大型の竜脚形類の体は、「吊り橋」のような構造になっていたと考えられています。
吊り橋は、支柱から橋の両端に向かって延びるワイヤーで、橋の両端までを吊っています。
同様に、後肢と骨盤を支柱として、ワイヤーに相当する靱帯で前方は首、後ろは尻尾までの骨をぶら下げていたということです。
首にはほとんど筋肉がなく、靱帯だけで骨を支えていることは、ゴムで風船をぶら下げているだけのような状態なので、首はほとんど動かすことができなかったと考えられています。
首が長い理由
機能性を犠牲にしてでも骨を軽く、筋肉を最小限にする。
それは体を大きくして首の長さを強調するためです。
体を大きく首を長くしたい。でも重くしたくない。その結果、このような性質にたどりついたのでしょう。
問題は、なぜそこまでして体を大きく、首を長くする必要があったのかということです。
以前は、高い木の葉を食べるために首が伸びたのだと考えられていました。
しかし、筋肉がほとんどなく、首の関節も上には曲げられない構造になっているため、頭を上に持ち上げることは不可能です。
肩の高さでほぼ水平に保つのが限度だっただろうと考えられています。
地面から肩までの高さは5mほどあるため、首を無理に上げなくても、キリンと同等程度の高さの木には届いていたことになります。
また、頭を高く上げていたのなら、高い位置にある頭の先まで血液を送るためには、生物としてはありえないほど巨大な心臓が必要になってしまいます。
首を高く持ち上げるのは、あらゆる意味で不可能なのです。
一方で、水を飲むためには首を下に向ける必要があることから、首には首を下げるための筋肉は多少つく構造になっていました。
首の下側にある筋肉を縮めることで首を下げ、筋肉を緩めるとまた自然に元の位置まで上がる、という具合に上下動させていたのでしょう。
水を飲むブラキオサウルス
首が長いことの合理的な理由は見当たりません。
それどころか、首が長いのはむしろハンディキャップです。
首が9mもあると、一回呼吸するのに数十秒もかかります。
1分間に数回しか呼吸ができないので、当然、激しい運動はできません。
また、食べたものが胃に届くまでにも、相当な時間がかかります。
では、いったい何故首が長いのか。
ヒントとなるのは、子供のうちはそれほど首が長くないということです。
子供にはなく、大人になるにつれて発達する特徴というのは、要するに繁殖のための性的なアピールと考えられます。
異性や、異性を奪い合う同性の仲間に対して見せつけるためのものです。
ブラキオサウルスの世界では、首が長いほど異性にモテたのではないかと想定されます。
だから、実生活ではほとんどメリットがなくデメリットばかりなのに、首を長く進化させたと考えられています。
ブラキオサウルスの骨格
腕が長く、肩がキリンのように腰より高い位置にあります。
かつて水中生活者とされた時期もありましたが、四肢が細いことなどから、現在では完全な陸生動物だったと判明しています。
また、鼻の穴も頭頂部にあってシュノーケルの役割を果たしたと考えられてきましたが、最近では、顔の先端近くにあったという可能性が有力視されています。
竜脚形類の食生活
ブラキオサウルスを含め、竜脚形類は体が大きく、しかも食べ物は栄養価が低く、消化しにくい植物だったので、とにかくたくさん食べなければいけません。
そのため、おそらく一日中、ほとんど寝ないで食べ続けていました。
食事をするブラキオサウルス
野生のゾウは、一日のうち約20時間を食事に費やしています。
それだけ食べ続けないと、あの大きな体を維持できないのです。
竜脚形類はゾウよりもはるかに巨大ですが、一日は24時間しかないので、ゾウ以上に食事に時間をかけることはおそらく不可能です。
竜脚形類の食事時間は、ゾウ並みの1日20時間程度だったと思われます。
竜脚形類は慣性恒温性というしくみによって燃費がよくなっているため、ゾウより巨大でも、ゾウ並みの食事量で体を維持することができたと考えられています。
竜脚形類の大移動
竜脚形類の足跡は多数が密集した状態で見つかることから、かなり大きな群れをつくって移動していたと考えられています。
これほど巨大な生き物が、何百頭という規模の群れで動いていたのですから、相当な迫力です。
また、群れが通った場所には道ができ、川沿いや海沿いだけでなく、場所によっては林の中にも、彼らが通るけもの道のようなものができていたかもしれません。
群れで移動するブラキオサウルス
ほぼ食事をするだけの生活なので、食料である植物が豊富な場所を、ゆっくりと食べ歩きながら暮らしていたと考えられています。
やみくもに移動していたわけではなく、移動する経路はおそらく決まっていて、その経路上にある植物を食べていたと思われます。
経路を一巡して元の場所に戻ってくる頃には、そこに再び植物が育っているといった合理的なサイクルを維持することで、食いはぐれることもなく1億年以上にもわたって繁栄を続けることができたのでしょう。