トロオドン Troodon 名前の由来 傷つける歯科名 トロオドン科分類 双弓亜綱、竜盤類、獣脚類生息地(発見地) アメリカ、カナダ時代 約8000万〜7200万年前(白亜紀後期)全長 約2m体重 約50kg食性 肉食解説「最も賢い恐竜は?」という質問に対し、長年その答えとして君臨してきたのが「トロオドン」です。 映画や図鑑でお馴染みのこの恐竜は、人間並みの知能を持つかもしれない未来の姿「ディノサウロイド(恐竜人間)」のモデルとしても知られ、古生物学の世界で特別な地位を占めてきました。しかし現在、この恐竜の名前が学術的に「消滅」の危機にあることをご存知でしょうか。 かつて「白亜紀の天才」と謳われたトロオドンの驚異的な知能や、一本の歯から始まった数奇な分類の歴史、そして最新の研究で判明した「名前の真実」について解説します。「傷つける歯」を持つ天才恐竜:脳と生態最大級の脳化指数トロオドンという学名は、ギリシャ語で「傷つける歯」を意味します。 ノコギリのような鋭い歯を持っていたことが由来です。 しかし彼らを有名にしたのは歯ではなく「脳」でした。 体の大きさに占める脳の比率(脳化指数)が当時の恐竜の中で最大級であり、極めて高い知能を持っていたと考えられています。夜行性のハンター感覚器官も非常に発達していました。 顔の正面についた大きな目は対象を立体的に捉えることができ、優れた視覚と聴覚で、暗闇の中でも獲物を見つける夜行性のハンターだったことを示唆しています。大きな目は対象を立体的に捉えることができた時には道具を使い知的な狩りを行っていた可能性さえあります。鳥のような姿と雑食説体長約2m、体重50kgの小型獣脚類で、現在は全身が羽毛に覆われた姿で復元されます。 従来は完全な肉食とされてきましたが、歯の形状が植物食恐竜に似ていることから、獲物がいない時は植物も食べる「雑食性」だったとする新説も浮上しています。幻の「恐竜人間(ディノサウロイド)」トロオドンの知能を語る上で欠かせないのが、1982年にデール・ラッセル博士が提唱した「ディノサウロイド(恐竜人間)」という思考実験です。「もし恐竜が絶滅せず、脳の大きなトロオドンが進化し続けたら?」 この問いに対する答えが、直立二足歩行をし、尾を失い、人間のような姿を持った知的生命体「ディノサウロイド」でした。 この衝撃的なビジュアルはSFやオカルト界にも多大な影響を与え、トロオドンの特別性を象徴するエピソードとなっています。分類学の迷宮と「トロオドンの死」ここまでトロオドンの魅力を紹介してきましたが、実は現在の古生物学において「トロオドン」という名前は消えつつあります。全ては「歯一本」から始まった1856年の命名時、根拠となった標本はたった「1本の歯」だけでした。 その後、歯が似ているという理由だけで様々な骨格が「トロオドン」として統合されていきました。 「賢い恐竜トロオドン」のイメージは、実はこの時に統合された「ステノニコサウルス」という別の恐竜の全身骨格に基づいていたのです。崩壊と分裂:疑問名へ2017年、決定的な再検証が行われました。 これまでトロオドンとされていた化石から新種「ラテニヴェナトリクス」が見つかり、同時に「ステノニコサウルス」も独自種として復活しました。 その結果、最初の「歯の化石」は種を特定できない「疑問名(無効)」と結論づけられたのです。つまり、「トロオドンという恐竜は存在しない(学術的に無効)」という衝撃的な事実が確定しました。 現在、かつてのトロオドンを指す場合は「ステノニコサウルス」や「ラテニヴェナトリクス」、あるいは「トロオドン科の一種」と呼ぶのが正確です。 PREV ドロマエオサウルス トルヴォサウルス NEXT この恐竜を見た人はこんな恐竜も見ています テラトフォネウス Teratophoneus 分類獣脚類 特徴肉食恐竜 時代白亜紀 アロサウルス Allosaurus 分類獣脚類 特徴肉食恐竜 時代ジュラ紀 レソトサウルス Lesothosaurus 分類鳥盤類 特徴草食恐竜 時代ジュラ紀 シュヴウイア Shuvuuia 分類獣脚類 特徴肉食恐竜羽毛恐竜 時代白亜紀 スポンサーリンク スポンサーリンク
解説
「最も賢い恐竜は?」という質問に対し、長年その答えとして君臨してきたのが「トロオドン」です。
映画や図鑑でお馴染みのこの恐竜は、人間並みの知能を持つかもしれない未来の姿「ディノサウロイド(恐竜人間)」のモデルとしても知られ、古生物学の世界で特別な地位を占めてきました。
しかし現在、この恐竜の名前が学術的に「消滅」の危機にあることをご存知でしょうか。
かつて「白亜紀の天才」と謳われたトロオドンの驚異的な知能や、一本の歯から始まった数奇な分類の歴史、そして最新の研究で判明した「名前の真実」について解説します。
「傷つける歯」を持つ天才恐竜:脳と生態
最大級の脳化指数
トロオドンという学名は、ギリシャ語で「傷つける歯」を意味します。
ノコギリのような鋭い歯を持っていたことが由来です。
しかし彼らを有名にしたのは歯ではなく「脳」でした。
体の大きさに占める脳の比率(脳化指数)が当時の恐竜の中で最大級であり、極めて高い知能を持っていたと考えられています。
夜行性のハンター
感覚器官も非常に発達していました。
顔の正面についた大きな目は対象を立体的に捉えることができ、優れた視覚と聴覚で、暗闇の中でも獲物を見つける夜行性のハンターだったことを示唆しています。
大きな目は対象を立体的に捉えることができた
時には道具を使い知的な狩りを行っていた可能性さえあります。
鳥のような姿と雑食説
体長約2m、体重50kgの小型獣脚類で、現在は全身が羽毛に覆われた姿で復元されます。
従来は完全な肉食とされてきましたが、歯の形状が植物食恐竜に似ていることから、獲物がいない時は植物も食べる「雑食性」だったとする新説も浮上しています。
幻の「恐竜人間(ディノサウロイド)」
トロオドンの知能を語る上で欠かせないのが、1982年にデール・ラッセル博士が提唱した「ディノサウロイド(恐竜人間)」という思考実験です。
「もし恐竜が絶滅せず、脳の大きなトロオドンが進化し続けたら?」 この問いに対する答えが、直立二足歩行をし、尾を失い、人間のような姿を持った知的生命体「ディノサウロイド」でした。
この衝撃的なビジュアルはSFやオカルト界にも多大な影響を与え、トロオドンの特別性を象徴するエピソードとなっています。
分類学の迷宮と「トロオドンの死」
ここまでトロオドンの魅力を紹介してきましたが、実は現在の古生物学において「トロオドン」という名前は消えつつあります。
全ては「歯一本」から始まった
1856年の命名時、根拠となった標本はたった「1本の歯」だけでした。
その後、歯が似ているという理由だけで様々な骨格が「トロオドン」として統合されていきました。
「賢い恐竜トロオドン」のイメージは、実はこの時に統合された「ステノニコサウルス」という別の恐竜の全身骨格に基づいていたのです。
崩壊と分裂:疑問名へ
2017年、決定的な再検証が行われました。
これまでトロオドンとされていた化石から新種「ラテニヴェナトリクス」が見つかり、同時に「ステノニコサウルス」も独自種として復活しました。
その結果、最初の「歯の化石」は種を特定できない「疑問名(無効)」と結論づけられたのです。
つまり、「トロオドンという恐竜は存在しない(学術的に無効)」という衝撃的な事実が確定しました。
現在、かつてのトロオドンを指す場合は「ステノニコサウルス」や「ラテニヴェナトリクス」、あるいは「トロオドン科の一種」と呼ぶのが正確です。