アルゼンチノサウルス Argentinosaurus
名前の由来
アルゼンチンのトカゲ
科名
ティタノサウルス科
分類
爬虫綱、竜盤類、竜脚形類
生息地(発見地)
アルゼンチン
時代
約1億~9300万年前(白亜紀前期~白亜紀後期)
全長
約35m(一説に48m)
体重
約100トン
食性
植物食
名前の由来
アルゼンチンのトカゲ
科名
ティタノサウルス科
分類
爬虫綱、竜盤類、竜脚形類
生息地(発見地)
アルゼンチン
時代
約1億~9300万年前(白亜紀前期~白亜紀後期)
全長
約35m(一説に48m)
体重
約100トン
食性
植物食
解説
アルゼンチノサウルスは、白亜紀に南アメリカ大陸に生息していた、地球史上最も体の大きい陸上生物だったと考えられている竜脚形類です。
その学名は「アルゼンチンのトカゲ」を意味し、発見された国にちなんで名付けられました。
かつてはジュラ紀のブラキオサウルスやアパトサウルスなどが巨大竜脚形類として有名でしたが、アルゼンチノサウルスはそれらをはるかに凌駕する並外れたサイズで、古生物学界に大きな衝撃を与えました。
地球史上最も体の大きい陸上生物だったと考えられている
圧倒的な巨大さの探求:断片的な化石が語る真実
アルゼンチノサウルスを語る上で最も重要な要素、それはそのとてつもない体の大きさです。
その推定全長は35〜45m、体重は60〜100トンにも及び、現生のインドゾウ20頭分に相当するとされています。
これは、体長が最も長いとされてきたセイスモサウルス(約33m)や、ブラキオサウルス(約25m)をはるかに凌駕するものであり、現代のシロナガスクジラに匹敵するほどのサイズです。
しかし、この驚異的な大きさは、限られた化石から推定されたものです。
1993年にアルゼンチンのネウケウ州で発見されたのは、背骨の一部、四肢の骨、不完全な肋骨、仙骨といった、非常に断片的な部位のみでした。
それでも、その一部の骨の巨大さは尋常ではありません。
胴椎(背骨)は一つだけで130〜160cmの長さがあり、脛骨は155cmにも達しました。
中には、高さ1.2mを超える脊椎骨も含まれていました。
科学者たちは、これらの断片的な化石を、より完全な骨格が見つかっている近縁種、特にパタゴティタンなどと比較・分析することで、アルゼンチノサウルスの全体像と正確な大きさを推定しました。
この手法により、体長約30〜35m、体重60〜83トン(アフリカゾウ10頭分に相当)という驚異的な数値が導き出されたのです。
アルゼンチノサウルス研究の初期、1994年には著名な古生物学者グレゴリー・ポールが全長30〜35m、体重80〜100トンと見積もりました。
また、2004年にはアルゼンチンの博物館が所蔵する骨格標本から、体重83トンと計算されています。
このように、研究者によって推定値は異なりますが、どの説においても、アルゼンチノサウルスが史上最大級の陸上動物であるという結論は揺らいでいません。
首を限界までもち上げた高さは、ビルの5階の窓にも届く21mに達したと推測されています。
巨大さゆえの生態と生物学的限界
アルゼンチノサウルスの巨体は、その生活様式にも大きな影響を与えました。
彼らが歩くだけで大地に地響きが起こり、その振動で捕食者に存在を知らせてしまうこともありました。
中国では、アルゼンチノサウルスと同じように巨体の恐竜が歩き、その足跡が深い穴となり、そこに小型の生物が落ちてしまったとされる「落とし穴の化石」も見つかっています。
しかし、その桁外れな巨大さゆえに、捕食者も簡単には手を出せませんでした。
当時同じ地域に生息していたギガノトサウルスやマプサウルスといった大型肉食恐竜であっても、完全に成長した個体を攻撃することはほとんど不可能だったと考えられています。
彼らが狙えたのは、老齢で弱った個体や幼体、あるいは複数の捕食者が協力した場合のみでした。
捕食者も簡単には手を出せなかった
これだけの巨大な体を維持するためには、相応の食糧も不可欠でした。
また、全身に酸素を送るための強靭なポンプ(心臓)も必要であり、アルゼンチノサウルスの巨体は、「おそらく、動物が陸上で生息できる限界の大きさ」ともいわれています。
2013年に行われた研究では、アルゼンチノサウルスの歩行速度は時速約7km/hと推定されており、彼らが悠然と、そしてゆっくりと歩いて暮らしていたことを示しています。
驚異的な成長と繁殖の秘密
アルゼンチノサウルスは、約40年かけて成長しきったとされています。
成長のピーク時には、1日に最大40キログラムも体重が増加したという研究結果も出ています。
1997年には、アルゼンチンのパタゴニア地方で、数万個のアルゼンチノサウルスの卵の化石が見つかった巨大な営巣地帯が発見されました。
卵の中には極めて保存状態の良い胚が残されており、生まれてすぐに食物を食べられるように歯が生え揃っていたことが分かりました。
アルゼンチノサウルスは、広大な森林地帯や開けた草原地帯に生息し、大量の植物を食べるために広範囲にわたる移動をしていたと推測されています。
大量の植物を食べるために広範囲にわたる移動をしていた
彼らが発見された南アメリカ南部のパタゴニア地方では、他にもギガノトサウルスをはじめとする巨大な恐竜化石が相次いで発見されています。
未解明の全貌と今後の展望
アルゼンチノサウルスは史上最大級の陸上動物として有名ですが、前述の通り、その化石は非常に断片的なものしか発見されていません。
そのため、その全体像については未だ多くの謎が残されています。
2014年には、アルゼンチノサウルスを大きさで凌駕する可能性のある大型新種恐竜の化石が発見され、古生物学界に再び衝撃が走りました。
まだ正式な学名はつけられていませんが、これはアルゼンチノサウルスの「世界一」の座を揺るがしかねない発見として注目されています。
しかし、このことはアルゼンチノサウルスの価値を損なうものではありません。
その断片的な骨から、科学者たちが想像を絶する巨大な生物の姿を解き明かしたという事実は、古生物学のロマンを象徴する出来事です。
現在でも、アルゼンチンでは新たな化石の発掘が期待されており、もし全身骨格が発見されれば、この偉大な恐竜の全貌が明らかになり、その「世界一巨大」の座はさらに揺るぎないものとなるでしょう。