メトリアカントサウルス Metriacanthosaurus

名前の由来

ほどよい(中ぐらいの)トゲを持つトカゲ

科名

メトリアカントサウルス科

分類

双弓亜綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

イギリス

時代

1億6000万年前(ジュラ紀後期)

全長

約6~8m

体重

約1トン

食性

肉食

解説

メトリアカントサウルスは、ジュラ紀後期のヨーロッパ、現在のイギリスに生息していた中型から大型の肉食恐竜です。
アロサウルスなどが所属するカルノサウルス類の一員とされていますが、その発見の歴史は分類の混乱の中にありました。

メガロサウルスの呪縛と独立

この恐竜の化石が初めて発見されたのは1923年と、比較的早い時期でした。
しかし、当時は「ヨーロッパで見つかった恐竜はすべてメガロサウルス」という、いわば「ゴミ箱分類群」のような風潮があったため、メトリアカントサウルスもメガロサウルスの一種として扱われてしまいました。

しかし、長い年月が経ち、化石が再検討された結果、メガロサウルスには見られない明確な相違点があることが判明します。
ついに1964年、古生物学者ウォーカーによって独立した属として「メトリアカントサウルス」という名前が与えられました。

「ほどよいトゲ」がもたらした独立

「メトリアカントサウルス」という名前は、古代ギリシャ語で「ほどよい(中ぐらいの)トゲを持つトカゲ」を意味します。
その名の由来は、最大の特徴である背骨(脊椎)の突起が、他の恐竜に比べて若干隆起していたことにあります。

この背骨の上の突起は長く、25cmあまりありました。
ここに筋肉がついていたため、背中がややもり上がった独特の体形となっていたと考えられています。
皮肉なことに、もしこの特徴的な脊椎の化石が発見されていなければ、彼はメガロサウルスの呪縛から解放されることなく、独自の種として認められることはなかったかもしれません。

謎に包まれた全体像

世に送り出されて100年近くが経過しようとしていますが、メトリアカントサウルスは未だに発見されている化石が非常に断片的です。

頭骨の一部、腰骨、脚(左大腿骨、右脛骨の一部)、脊椎(胴椎、尾の一部)などしか見つかっておらず、全身骨格は揃っていません。
標本数があまりにも少ないため、復元骨格が作られることも稀で、詳しいことは未だ分かっていないのが現状です。

現在のところ、体長は6~8m、体重は1トン弱ほどだったと推定されています。
また、中国で発見されたヤンチュアノサウルスに近縁であるとされています。

ジュラシック・パーク/ジュラシック・ワールド Jurassic
Park / World
シリーズ登場恐竜

  • ジュラシック・パーク における活躍

    生体としての姿は一切見せず、その名前のみが登場します。

    劇中での登場は、デニス・ネドリーが盗み出そうとする恐竜の胚(受精卵)が保管されている「胚保存室」のシーンです。
    彼が盗む胚の一つとしてラベルに名前が記載されており、当時は非常に知名度の低い恐竜であったため、プロケラトサウルスと同様に「一体どのような恐竜なのか」と、一部のファンの注目を集めました。
    なお、胚のラベルには識別用として頭骨の標識が描かれていました。

    また、本作の日本語版(字幕・吹替)においては、メトリアカントサウルスの名前が「メトリントサウルス」と誤って翻訳されている点も有名です。
    この翻訳ミスは、映画が初めてソフト(VHSやDVDなど)としてリリースされてから現在に至るまで、長期間修正されていない状態が続いています。

  • ジュラシック・ワールド における活躍

    『ジュラシック・ワールド』の本編に、メトリアカントサウルスの生体は登場しません。
    しかし、彼女は第1作『ジュラシック・パーク』の時代から、設定上は公式リストに含まれていた恐竜でした。

    初めて名前が登場してからおよそ22年の時が流れた2015年、ついに『ジュラシック・ワールド』への出演の打診が舞い込みました。

    CGデザインも作られ、劇中で暴れ狂うシーンが撮影されたかと思いきや、いざ完成した映画本編を見たところ、なんと驚くべきことに、出番は全カットされてしまっていたのです。

    このあまりの仕打ちに、流石に公式も哀れに思ったのか、現在、公式HP(ウェブサイト)などにおいて、映画に出演するはずだった彼女のCGデザインの姿を確認することができます。

この恐竜を見た人は
こんな恐竜も見ています
ティラノサウルス