ピロラプトル Pyroraptor

名前の由来

火の略奪者

科名

ドロマエオサウルス科

分類

爬虫綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

フランス

時代

約7060万年前(白亜紀後期)

全長

約2.4m

食性

肉食

解説

ピロラプトルは、白亜紀後期のヨーロッパ(現在のフランス)に生息していたドロマエオサウルス科の獣脚類です。

南フランス・プロヴァンス地方の地層から発見されたこの小型肉食恐竜は、そのかっこいい名前の由来や、わずかな化石から推測される高い身体能力で知られています。

「オリンポスの炎」と「火の略奪者」:ドラマチックな名前の由来

この恐竜の最大の特徴の一つは、その劇的な名前の由来にあります。

名前の意味

「ピロラプトル」という学名に含まれる「ピロ」とは、英語で「火」を意味する言葉です。
直訳すると「火の略奪者」という名前になります。

発見の経緯

なぜこのような名前が付けられたのか。
それは、化石がモン・オランプ(オリンポス山)で発生した山火事の後の現場から発見されたからです。

この印象的な発見場所と経緯から、「オリンポスの炎の略奪者」を意味する「ピロラプトル・オリュンピウス」と命名されました。

わずか10%の化石から読み解く特徴:鋭い爪と身体能力

ピロラプトルは、その詳細な姿がいまだ多くの謎に包まれています。
現在発掘されている化石は極めて少なく、全体の骨格のわずか10%ほどしか地表に出ていません。

発見されている部位

具体的に発見されているのは、以下のごく一部に限られています。

  • 腕と脚の骨
  • 2本の欠けた歯
  • 数個の脊椎
  • 長さ6cmほどの鋭利な爪
  • 上顎と下顎の先端部分

推定される生態と身体能力

残されたわずかな化石からも、いくつかの身体的特徴や生態が推測されています。

大きさ

近縁種のデータを参考にすると、全長はおよそ2.4mほどであったと推定されています。

走行と木登り

発見された長さ6cmほどの鋭利な爪や、非常にしっかりとした足の骨の構造から、ピロラプトルは走るのが得意であったと考えられています。
さらに、その身体能力を生かして木登りをする技術にも長けていたのではないかと推測されており、当時の環境を縦横無尽に駆け回るハンターであった可能性が示唆されています。

複雑な分類:南半球との繋がりとヴァリラプトル同種説

ピロラプトルの分類に関しては、学術的に興味深い議論がなされています。

ゴンドワナ大陸との繋がり

解剖学的な特徴を見ると、ゴンドワナ大陸南部に生息していた「ウネンラギア亜科」との類似点が見られます。
このため、2019年に発表されたヘスペロルニトイデスの記載論文内では、ピロラプトルはウネンラギア亜科の中に配置されました。
これは、ヨーロッパとゴンドワナ大陸の恐竜の間に、何らかの進化的・地理的な繋がりがあった可能性を示しています。

ヴァリラプトルとの関係(シノニム説)

その一方で、同じ地層からは同じドロマエオサウルス科である「ヴァリラプトル」という恐竜も発見されています。
生息年代や場所が重なることから、ピロラプトルは実はヴァリラプトルのシノニム(同物異名)、つまり「実は同じ種類の恐竜であり、名前が違うだけではないか」という可能性も指摘されています。

わずかな化石から「火の略奪者」と名付けられ、その正体を巡って様々な研究や推測が飛び交うピロラプトル。
発見率は低いものの、その鋭い爪と強靭な足で白亜紀後期のフランスを駆け抜けていたことだけは確かなようです。

ジュラシック・パーク/ジュラシック・ワールド Jurassic
Park / World
シリーズ登場恐竜

  • ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 における活躍

    シリーズにおいては珍しく全身が赤い羽毛でフサフサに覆われた姿で描かれ、その特異な生態とビジュアルで観客に強烈なインパクトを与えました。

    本作に登場するピロラプトルは、同じく初登場のアトロキラプトルと同様、映画的な演出として実際の2倍ほどに巨大化されています。

    最大の特徴は、これまでのヴェロキラプトルやアトロキラプトルとは異なる、全身を覆う鮮やかな赤い羽毛です。
    これは近年の学説を取り入れたデザインであり、シリーズの恐竜描写における新たな試みとなっています。

    劇中では、バイオシン・サンクチュアリの凍った湖に不時着したオーウェンとケイラの前に現れ、襲い掛かりました。
    このシーンでピロラプトルは、羽毛の高い保温性を活かし、驚くべき適応能力を見せつけます。
    氷を割って冷水の中へと飛び込み、水鳥のようにスイスイと泳ぎ回るだけでなく、水中から獲物を狙うシャチの如く氷の下から攻撃を仕掛けるという離れ業を披露しました。

    陸上と水中を自在に行き来するトリッキーな攻撃で二人を追い詰めましたが、廊下を渡った先にあるエレベーターへと逃げ込まれてしまいます。

    最後は、ケイラによる電気ショック(スタンガン)を食らって吹き飛ばされました。
    閉まりゆくエレベーターの扉の向こうで、悔しそうに中を覗き込む姿を残し、その出番を終えました。

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