ティロサウルス Tylosaurus

名前の由来

握り玉のようなトカゲ

科名

モササウルス科

分類

双弓亜鋼、有鱗目、鱗竜類

生息地(発見地)

アメリカ、ニュージーランド、日本

時代

8500万~6800万年前(白亜紀後期)

全長

約15m

体重

約10トン

食性

魚食

解説

恐竜たちが陸上を支配していた白亜紀後期。
海の世界でもまた、巨大で獰猛な捕食者たちが覇権を争っていました。
その頂点に君臨していたのが、最大全長15mにも達する巨大な海生爬虫類、「ティロサウルス」です。

彼らは恐竜ではなく、トカゲやヘビに近い「有鱗類(モササウルス科)」ですが、その実力は陸のティラノサウルスに勝るとも劣らないものでした。
軍船のような硬い鼻先を持ち、目につく獲物を片っ端から丸呑みにしていたこの「海の殺し屋」。

マッコウクジラ級の巨体を誇るティロサウルスの驚異的な能力や、サメや恐竜まで食べていた飽くなき食欲、そして発見にまつわる数奇な歴史について解説します。

マッコウクジラ級の巨体と「握り玉」の鼻先

名前の由来は「握り玉のようなトカゲ」

ティロサウルスという学名は、古代ギリシャ語で「握り玉(こぶ)」や「膨らんだ」を意味する「ティロ(Tylos)」に由来し、「握り玉のようなトカゲ」を意味します。
この奇妙な名前は、彼らの上顎の先端が円筒形で、非常に硬い骨質状の「こぶ」のように突き出していたことにちなんでいます。

鼻先は武器か?センサーか?

この硬い鼻先には、主に二つの役割があったと考えられています。

衝角としての武器

軍船の衝角のように、獲物やライバルに対して強烈な体当たりを行っていたとする説。
化石には鼻先の損傷も確認されています。

センサー保護

近年のCTスキャンにより、鼻先には多くの感覚神経が通っていたことが判明しました。
硬い骨はデリケートなセンサーを守るケースだった可能性もあります。

スマートな海の支配者

最大全長は約15m。
現生のマッコウクジラと同等のサイズですが、爬虫類特有のスマートな体型のため、体重はクジラより遥かに軽かったと推測されます。
頭部はワニのように長く、首は非常に短いのが特徴です。

頭部はワニのように長く、首は非常に短いのが特徴。

頭部はワニのように長く、首は非常に短いのが特徴。

完全に海に適応しており、ウミガメのように上陸することなく、海中で子供を産む「卵胎生」でした。

メニューは「目につくもの全て」!驚異の捕食スタイル

白亜紀後期の海において、ティロサウルスは最大級の捕食者でした。

ヘビのような「丸呑み」

顎の構造はヘビに似ており、関節を外すように大きく口を開くことができました。
口の天井(口蓋)にも鋭い歯が並んでおり、一度咥えた獲物は逃しません。
胃の内容物の化石からは、獲物を咀嚼せず、ヘビのように一気に「丸呑み」にしていたことが分かっています。

胃の中からサメや海鳥を発見

彼らの胃の中から発見された「最後の晩餐」は、当時の生態系そのものです。
魚類、サメ、大型のカメ、アンモナイト、首長竜、小型のモササウルス類、さらには飛べない海鳥「ヘスペロルニス」までが見つかっています。
彼らは選り好みせず、視界に入った動くものを片っ端から襲う貪欲なハンターでした。

恐竜も食べていた?

ティロサウルスは陸上の恐竜を食べた証拠も見つかっています。
アラスカ沖で見つかったハドロサウルス科の植物食恐竜の骨に、ティロサウルスの歯と一致する穴が開いていたのです。
これは洪水で流された死体を漁った跡だと考えられています。
彼らはサメのように、海を漂うご馳走も逃さなかったのです。

化石戦争に翻弄された名前の歴史

ティロサウルスの名前が決まるまでには、19世紀アメリカの古生物学者コープとマーシュによる激しい「化石戦争」の影響で、複雑な改名劇がありました。

二度の「名前被り」を経て

1868年の発見以降、以下のような変遷を辿りました。

  1. マクロサウルス: コープが発表するも、既存種に統合。
  2. リノサウルス(鼻トカゲ): マーシュが命名するも、サイの一種に使われており無効に。
  3. ランポサウルス(クチバシトカゲ): 次の候補も、トカゲの一種に使われており無効に。

1872年、ようやく現在の「ティロサウルス」に落ち着きました。
約2世紀を経て、私たちはこの「海の王者」の姿を正しく認識できるようになったのです。

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