カウディプテリクス Caudipteryx

名前の由来

尾に羽を持つもの

科名

カウディプテリクス科

分類

双弓亜綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

中国

時代

約1億4400万~9900万年前(白亜紀前期)

全長

約1m

体重

約2.5〜9kg

食性

雑食

解説

恐竜と鳥類。
かつて全く別の生き物だと考えられていたこの二つを繋ぐ決定的な証拠が、20世紀末に中国で発見されました。

その恐竜の名は、「カウディプテリクス」。

ラテン語で「尾に羽を持つもの」を意味する名の通り、見事な尾羽を持つこの生物は、1998年の発見以来、古生物学界に衝撃を与え続けています。
二足歩行の獣脚類でありながら羽毛を持ち、クチバシと歯が混在するその姿は、「恐竜」と「鳥」の境界線に立つ存在です。

1998年の衝撃:進化論を裏付ける「ミッシングリンク」

中国・熱河生物群での発見

物語は1998年、化石の保存状態が良いことで有名な中国遼寧省の「熱河生物群(ジェホール生物群)」で幕を開けます。
火山灰に埋もれ奇跡的に保存されたカウディプテリクスの化石には、骨格だけでなく「はっきりとした羽毛の痕跡」が残されていました。

当時、「鳥類は恐竜から進化した」という説の決定的な証拠が求められていました。
カウディプテリクスの登場は、「鳥類は羽毛を持った獣脚類から進化した」という仮説を強力に裏付ける生きた証拠(ミッシングリンク)となり、教科書の記述を書き換えるほどのインパクトを与えたのです。

「飛べない鳥」との誤解

しかし、あまりにも鳥に近い姿(全長1m、翼のような羽、短い尾)だったため、当初は「進化後に飛ぶ能力を失った鳥類(飛べない鳥)ではないか?」という誤解も生まれました。
カウディプテリクスは、その完成された姿ゆえに、自らのアイデンティティを巡る論争の渦中に立たされることになります。

恐竜か?鳥か?巻き起こった大論争

揺れる分類と「叉骨」の存在

議論の根拠の一つは、現在の鳥類が飛行に使う筋肉をつなぐ「叉骨(さこつ)」の発達でした。
これを持っていることは、彼らが鳥類に極めて近い位置にいたことを意味します。

決着の鍵は「歯」と「骨格」

しかし、詳細な研究により論争に決着がつきました。

歯の存在

クチバシ状の口の奥に明確な「小さな歯」があり、爬虫類的な特徴を残していました。

クチバシ状の口の奥に「小さな歯」があった

クチバシ状の口の奥に「小さな歯」があった

骨格構造

腕の比率や骨盤の構造などは、鳥類よりも「オヴィラプトル」などの獣脚類恐竜に近いことが判明しました。

現在では、カウディプテリクスは「鳥に進化した系統とは別の、羽毛を持つオヴィラプトル類の獣脚類恐竜」というのが定説です。

飛べない翼と羽毛の役割:最新研究が暴いた「色」

パラシュートとしての翼

前肢の羽は長さ20cmほどありましたが、空を飛ぶための揚力を生む「左右非対称」の形状ではなく、腕も短すぎました。
しかし、全く無駄だったわけではありません。
樹上から飛び降りる際に広げて空気抵抗を増やし、パラシュートのように落下の衝撃を和らげる役割を果たしていたと考えられています。

求愛用ディスプレイと「玉虫色」の羽

羽毛は保温のほか、尾の羽を広げて異性にアピールするディスプレイ(求愛行動)に使われた可能性が高いです。
さらに2019年の色素細胞(メラノソーム)の分析により、彼らの羽毛は黒系でありながら「玉虫色」の光沢を持っていた可能性が示唆されました。

羽毛は「玉虫色」の光沢を持っていた可能性が示唆された

羽毛は「玉虫色」の光沢を持っていた可能性が示唆された

白亜紀の森で、カラスやタマムシのように虹色に輝く羽で求愛ダンスを踊っていたのかもしれません。

小さな猛獣か?胃石が語る「雑食性」

俊足のランナー

骨格は軽量で、鳥のように発達した脚を持っていました。

骨格は軽量で、鳥のように発達した脚を持っていた。

骨格は軽量で、鳥のように発達した脚を持っていた。

彼らは翼で飛ぶ代わりに、強靭な脚力で大地を駆け回る「俊足のランナー」でした。

胃石と食性の変化

当初は鋭い歯から肉食と考えられていましたが、お腹の中から「胃石(いせき)」(消化を助ける小石)が大量に発見されました。
これは消化しにくい植物を食べていた証拠です。
鋭い歯で昆虫やトカゲを捕食しつつ、胃石を使って木の実や葉も食べるという、環境に適応した「雑食性」であった可能性が高いのです。

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