トロサウルス Torosaurus

名前の由来

穴の開いたトカゲ

科名

ケラトプス科

分類

双弓亜綱、鳥盤類、周飾頭類

生息地(発見地)

アメリカ、カナダ

時代

約7000万~6600万年前(白亜紀後期)

全長

約6〜8m

体重

約5〜8トン

食性

植物食

解説

トロサウルスは、白亜紀後期の北アメリカに生息していた最大級の角竜(ケラポッド類)の一種です。
その名は「穴の開いたトカゲ」を意味し、その特徴的な頭部のフリルから名付けられました。
全長は6m〜8m、体重は約5〜8トンと推定され、トリケラトプスとほぼ同じ時代、同じ地域に生息し、恐竜が絶滅する直前まで生き残った種のひとつです。

陸上動物史上最大の頭部と特異なフリル

トロサウルスの最大のインパクトは、何と言ってもその巨大な頭部にあります。
頭骨の長さは2.7mにも及び、これはこれまでに発見された陸上動物の中で最大です。
体長の4割近くを占めるほどのこの巨大な頭部には、鼻の上と目の上に計3本の角が生えていました。
特に、頭部上端の襟飾り(フリル)は近縁種と比べても最大級で、口先からフリルの端までが3m近くにも達しました。

フリルは頭骨全体の半分を超えていますが、2つの大きな目玉のような穴が空いており、見かけよりも軽かったようです。
この穴は、巨大なフリルを軽量化するために開いたものとされており、同じ特徴はカスモサウルスらにも存在します。
なぜそこまでして顔を大きく見せたかったのかは不明ですが、トロサウルスら角竜にとって、頭が大きいことこそがメスに好かれる絶対条件だったのかもしれません。

この巨大なフリルや角は単なる飾りではなく、縄張りやメスをめぐって激しい闘争を繰り広げていたことを示す生々しい証拠が残っています。
多くのトロサウルスのフリルには、他の個体の角によって突き刺されたとみられる、治癒した傷跡が見つかっています。

「トロサウルス=トリケラトプス説」:世紀の論争と決着

トロサウルスをめぐる最大の科学的論争は、「トロサウルスは、実は非常に年老いたトリケラトプスの姿なのではないか?」という「同属説」でした。
この説は、両者がほぼ同じ時代、同じ地域に生息し、フリルの穴以外に相違点がほとんど見られなかったことから生まれました。
もしこの説が認められていたら、トロサウルスの存在自体が抹消される危機に陥っていました。

2010年、著名な古生物学者ジャック・ホーナー博士らは、この説を発表し、大きな注目を集めました。
彼らは、トロサウルスの化石は成熟した大きな個体しか見つからないこと、そしてトリケラトプスのフリルには、成長に伴って穴が開き始める前兆のような薄い部分があることから、「トリケラトプスは成長の最終段階でフリルに穴が開き、トロサウルスへと姿を変えた」という画期的な説を発表しました。

しかし、この説は発表当初から多くの学者に受け入れられたわけではありませんでした。
その後の研究で複数の強力な反証が示され、この論争は決着を迎えました。

若者のトロサウルスと老人のトリケラトプス

同属説に矛盾する、まだ若い(亜成体)トロサウルスの化石や、骨の組織から明らかに高齢だと分かるのにフリルに穴が開いていないトリケラトプスの化石が確認されました。

フリルの骨の構造の違い

トロサウルスのフリルにある穴の周りには、吸収と再成長を繰り返した複雑な骨の構造が見られますが、トリケラトプスのフリルにはそのような構造が見られないことが指摘されました。

フリルの縁の小鱗状骨の数の違い

フリルの縁を飾る小さな骨の突起(小鱗状骨)の数が、両者で明確に異なりました。

これらの証拠により、現在ではトロサウルスとトリケラトプスは、近縁ではあるものの、明確に異なる独立した属であるという科学的な結論が出ています。

独自の防御システムと化石の希少性

トロサウルスの頭や胴体は、トリケラトプスの重厚な体形に比べると軽く見えます。
しかし、トロサウルスは草食恐竜であり、大型の肉食恐竜から攻撃を受ける立場にあったと考えられていますが、大きな角と頑丈な体を持っていたため、その攻撃は容易ではなかったと思われます。
特に、攻撃を受けやすい背部については、腰の骨が癒合して強化されていたことが分かっています。
また、トロサウルスのフリルには、フリル表面上方に伸びる長い鱗状骨があり、見た目からトリケラトプスと見分けることができます。

トリケラトプスが大量に生息していたのに対し、トロサウルスの化石は非常に稀で、トリケラトプスの頭骨が15個見つかるごとにトロサウルスの頭骨は1個しか見つからないほどの割合です。

これからも、この巨大な頭を持つ恐竜のさらなる秘密が、研究によって明らかになっていくことでしょう。

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