シノケラトプス Sinoceratops
名前の由来
中国の角のある顔
科名
ケラトプス科
分類
双弓亜綱、鳥盤類、周飾頭類
生息地(発見地)
中国
時代
約7200万〜6600万年前(白亜紀後期)
全長
約6〜7m
体重
約2トン
食性
植物食
Jurassic
Park / World シリーズ登場恐竜
ジュラシック・ワールド/炎の王国 における活躍
本作がシリーズデビュー作であり、恐らく世界で初めてメディアにその姿を現した作品でもあります。
シリーズに登場する恐竜の中で、最も最近に発見された新種という点でも注目されました。
シノケラトプスは、インジェン社の公式リストには存在せず、ジュラシック・ワールドでも展示されていない恐竜でした。
しかし、イスラ・ヌブラル島には何故か数頭の野生個体が生息しており、恐らくウー博士らが秘密裏に作り上げた実験体の一つであるとされています。
外見上の大きな特徴として、頭部のフリルにある穴(開口部)には皮膜が張られていない復元デザインとなっています。
劇中では意外にもヒーロー役を演じ、物語の重要な場面で活躍しました。
オーウェンの救出
ウィートリーの麻酔弾によって昏睡状態に陥っていたオーウェンに対し、気付け薬代わりとして強烈な臭いのヨダレを頬に塗りたくり、彼を目覚めさせるきっかけを作りました。
カルノタウルスとの一騎打ち
火山噴火の混乱の中、カルノタウルスと一騎打ちを演じました。
これは映画における最大の見せ場の一つであり、カルノタウルスの噛み付き攻撃にも怯まず突進し、先輩格の恐竜を完膚なきまでに叩きのめす剛力ぶりを見せつけ、観客にその強さをアピールしました。
制作の裏話として、当初この恐竜はパキリノサウルスとして登場する予定でした。
しかし、この恐竜の産地である中国の観客向けに急遽シノケラトプスに変更されたといわれています。
その名残として、劇中の資料である「Arcadia's manifest(アルカディア号の積荷目録)」には、パキリノサウルス扱いで記載が残っています。























解説
アジア大陸の恐竜史を塗り替えた、中国の巨大な角竜「シノケラトプス」。
2010年に命名された比較的新しいこの恐竜は、その希少な生息地と進化の謎、そして近年のメディアでの活躍によって、世界中の古生物学者や恐竜ファンから熱い注目を集めています。
アジア最大の角竜、その名は「中国の角のある顔」
シノケラトプスは、白亜紀後期(約7200万〜6600万年前)の中国大陸に生息していた角竜類です。
その化石は、白亜紀後期の地層が広がる中国山東省の諸城(ズーチェン)という地域で発見されました。
この発見を受け、2010年に「中国諸城の角のある顔」を意味する「シノケラトプス・ズケンゲンシス」という学名が与えられました。
彼らが生きていた時代は白亜紀の末期であり、海を隔てた北米大陸では、あの有名なトリケラトプスが繁栄していた時期と重なります。
シノケラトプスもまた、アジアの地で独自の進化を遂げた、トリケラトプスの同期とも言える存在でした。
全長6m超!独特な容姿と身体的特徴
シノケラトプスはセントロサウルス亜科に分類される恐竜で、現在アジアで発掘された中では最大の角竜とされています。
北米に生息していた多くの近縁種と比較しても遜色のない、堂々たる体躯を誇っていました。
最大の特徴は「巨大な頭部」
彼らの最大の特徴は、なんといってもその巨大な頭部です。
同系統の恐竜の中では最大級となる180cmにも及ぶ頭骨を持ち、鼻の上には太い一本の角が生えていました。
また、セントロサウルス類の仲間でありながら、カスモサウルス亜科やプロトケラトプスに似た特徴も併せ持っているという点も、研究者を驚かせた要因の一つです。
6〜7mという巨体の割に、どこか原始的な角竜の特徴を残しているという不思議な性質を持っていたのです。
現在までに発見されている化石は頭骨の一部のみであり、全身骨格の詳細は未だ謎に包まれています。
しかし、わずかに残された物証から得られたデータは、彼らが中国では極めて珍しい大型角竜であったことを如実に物語っています。
角竜進化のミッシングリンク:なぜアジアに?
シノケラトプスの発見は、単に「新しい恐竜が見つかった」というだけでなく、角竜の進化の歴史を解き明かす上で非常に重要な意味を持っていました。
これまで、トリケラトプスのように立派な体躯と角を持つケラトプス科の恐竜は、そのほとんどが北米大陸で発見されており、アジアでは発見例が極めて稀でした。
中国大陸で見つかる角竜といえば、プシッタコサウルスのような原始的で小型のものが主であり、シノケラトプス発見以前にアジアで見つかっていたケラトプス科の恐竜は、ウズベキスタンのトゥラノケラトプス(体長2メートル程度)のみだったのです。
北米からアジアへの「Uターン説」
そんな「角竜不毛の地」と思われていたアジア(特に中国)において、北米の大型種に匹敵するシノケラトプスが発見されたことは、古生物学界にとって衝撃的なニュースでした。
近年の研究では、角竜類は一度北米大陸で進化・巨大化を遂げた後、ベーリング海峡(当時は陸続きだったベーリンジア)を通って、故郷であるアジアへと「Uターン」してきたのではないかと推測されています。
これはティラノサウルス科や一部のハドロサウルス科の恐竜にも見られる移動パターンであり、シノケラトプスは大陸間を股にかけた恐竜の大移動と進化の謎を紐解くための重要な鍵となっているのです。
なお、シノケラトプスが発見された諸城の地層からは、巨大な肉食恐竜「ズケンティラヌス」や、超大型のハドロサウルス類「シャントゥンゴサウルス」なども見つかっており、当時のこの地域が巨大恐竜たちのひしめく豊かな生態系であったことが窺えます。
スクリーンデビューと高まる人気
学術的に極めて重要な存在であるシノケラトプスですが、スティラコサウルスやパキリノサウルスといった他の有名な角竜に比べると、一般層への知名度はそこまで高くはありませんでした。
しかし、その状況を一変させたのが、ハリウッド映画への出演です。
『ジュラシック・ワールド』での活躍
2018年に公開された映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』において、シノケラトプスは主要な恐竜の一体として抜擢されました。
劇中では、他のメジャーな角竜たちを差し置いて登場し、獰猛な肉食恐竜カルノタウルスと死闘を繰り広げるなど、強烈なインパクトを残しました。
また、日本国内においても、2020年公開のアニメ映画『映画ドラえもん のび太の新恐竜』にて、シノケラトプスをモデルとしたキャラクター「トップ」が登場しています。
まとめ
出自も特徴もレアづくしなこの恐竜は、発見からわずかな期間で世界中の学者を唸らせ、さらにエンターテインメント業界からの熱いまなざしを受けるスター恐竜へと駆け上がりました。
化石の発見状況から詳しい生態はまだ不明な点も多いですが、今後さらなる研究が進めば、アジアの恐竜史における彼らの役割がより鮮明になることでしょう。