シノサウルス Sinosaurus

名前の由来

中国のトカゲ

分類

双弓亜綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

中国

時代

ジュラ紀前期

全長

約5.6m

食性

肉食

解説

ジュラ紀前期の中国に生息していた肉食恐竜「シノサウルス」。
全長約5.6mの中型獣脚類であり、当時の生態系において頂点捕食者として君臨していました。

現在でこそ確固たる地位を築いているシノサウルスですが、過去には「中国産のディロフォサウルス」と誤認されるなど、半世紀にも及ぶ「冬の時代」を経験した数奇な運命を持つ恐竜です。

シノサウルスとは?当時の生態系の頂点

シノサウルスは、当時の雲南省における生態系の頂点でした。
実際に、同じ地層からは古竜脚類の植物食恐竜「ユンナノサウルス」とともに死んだ化石も発見されており、彼らを獲物にしていた可能性が高いと考えられています。

特徴的な「2本のトサカ」と顎の構造

豊富な化石標本によって明らかになったシノサウルスの身体には、原始的な特徴と進化的な特徴が混在しています。

奇妙な頭部のトサカ

頭(鼻先)の上には、発達した板状の突起である「2本の顕著なトサカ」がありました。
これはあまり頑丈な造りではなく、獲物や外敵との闘争で武器として用いられることはなかったと考えられています。
主に仲間同士の識別や、異性へのディスプレイ(誇示)に使われていたと推測されます。

原始的かつ進化的な顎

鼻の穴の下あたりで上顎の骨がへこんでいるという「原始的な特徴」を持つ一方で、上顎の歯並びが目の下まで達していないという「進化的な特徴」も併せ持っています。

波乱万丈の研究史:長すぎた「冬の時代」と劇的な転機

シノサウルスの歴史は、中国古生物学界の最高峰として知られる楊鍾健(ヤン・チョンチェン)によって見出されたことから始まります。

偉大な発見と不遇の半世紀

1940年ごろ、中国雲南省にて上下の顎を含む部分的な化石が発掘され、1948年に正式に命名されました。
当時はメガロサウルスに似た姿で復元されていましたが、発見された標本の保存状態があまりにも悪く、研究の手がかりが乏しい状態でした。
そのため、長い間「疑問名(学名としての有効性が疑わしい名称)」スレスレの、極めてマイナーな恐竜としての不遇の生活を送ることになります。

「中国のディロフォサウルス」としての発見

最大の転機が訪れたのは1987年以降です。
雲南省晋寧県などで、2本のトサカを持つ非常に保存状態の良い獣脚類の頭骨を含む追加標本が次々と発見されました。
この特徴的なトサカから、当初この化石は北アメリカのディロフォサウルスの新種とみなされ、「ディロフォサウルス・シネンシス(中国産のディロフォサウルス)」と命名されました。

真実の判明とアイデンティティの確立

しかし近年の研究により事態は急転します。
この「中国産のディロフォサウルス」とされた立派な化石が、かつて断片的な顎しか見つかっていなかった「シノサウルス」と全く同種であることが判明したのです。
これにより標本群がすべてシノサウルスに統合され、少なかった化石資料が一気に倍増。
シノサウルスは長い不遇の時代を抜け出し、古生物学界における知名度を爆発的に上げることになりました。

分類の更新:ディロフォサウルス科ではない?

シノサウルスは当初、その2本のトサカから「ディロフォサウルス科」に分類されていましたが、現在ではその考えは改められつつあります。

より進化した肉食恐竜のグループである「堅尾類(テタヌラ類)」に見られる原始的な特徴が確認されたため、ディロフォサウルス科からは除外して考える説が多くなっています。
つまり、姿は似ていても、独自の進化を遂げた別系統の恐竜であったということです。

粗末な化石から始まり、「別の恐竜」としての勘違いを経て、見事に「シノサウルス」としての確固たるアイデンティティを取り戻しました。
2000年代に入ってからも新たな化石の発見は続いており、研究も急速に進んでいます。
長い冬の時代を乗り越えたシノサウルスは、非常にホットな研究対象となっているのです。

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