ティタノサウルス Titanosaurus

名前の由来

巨人のトカゲ

科名

ティタノサウルス科

分類

双弓亜綱、竜盤類、竜脚形類

生息地(発見地)

インド

時代

約8300万~6500万年前(白亜紀後期)

全長

約12〜19m

体重

約14トン

食性

植物食

解説

恐竜の名前には、その巨大さや獰猛さを象徴する壮大な意味が込められることが多くあります。
その中でも古生物学の歴史において重要な位置を占めるのが「ティタノサウルス」です。

ギリシャ神話の巨人族「ティターン」に由来し、「巨人のトカゲ」という勇ましい名を持つこの恐竜。
かつては「インド初の恐竜」として華々しくデビューし、巨大恐竜グループの筆頭として名を馳せましたが、現在は「疑問名」という烙印を押され、存在そのものが危ぶまれる数奇な運命を辿っています。

歴史的発見:インド初の恐竜と「ティタノサウルス類」の始祖

インド初、白亜紀からの使者

ティタノサウルスの歴史は古く、その発見は19世紀にまで遡ります。
1877年、白亜紀後期のインドの地層から、ある竜脚形類の化石が発見されました。
これが模式種である「T.インディクス」です。
発見部位は椎骨と肋骨の一部のみという断片的なものでしたが、これは「初めてインドで発見された恐竜」として記録されています。

巨人たちの総本山「ティタノサウルス類」

この恐竜の名が広く知られている最大の理由は、白亜紀後期の竜脚形類一大グループ「ティタノサウルス類」の名前の由来となっている点にあります。

このグループには、史上最大級のアルゼンチノサウルス、巨大なドレッドノータス、北米のアラモサウルスなど、錚々たる面々が在籍しています。
ティタノサウルスは、これらスター恐竜たちが名を連ねるグループの代表として、長らくその名の冠を戴いていたのです。

推測される身体的特徴:鎧をまとった中型の巨人

グループの代表であるティタノサウルス自身は、どのような姿をしていたのでしょうか。

「巨人」という名の意外なサイズ

「ティターン(巨人)」の名を持ちますが、実はティタノサウルス自身は、竜脚形類の中では中型サイズに留まっていたと考えられています。
近縁属からの推定による全長はおよそ12〜19m。
30mを超える超大型種と比較すると、そこまで巨大ではありませんでした。

鎧をまとった樽型のボディ

その体型はずんぐりとしていました。

ずんぐりとした体型をしていた

ずんぐりとした体型をしていた

胴体は幅が広く、まるで樽のような形状をしており、四肢は短めで、がっしりとした太い首を持っていました。

最大の特徴は「装甲」です。
背中には鎧のような骨質のプレートを備えており、かつては鎧を持ったブラキオサウルスのような復元図が描かれることもありました。

特殊な骨格と鞭のような尾

尾は非常に長く、先端は鞭のような形状をしていた説が有力です。
また、他の巨大竜脚形類が体重を軽くするために骨を空洞化させているのに対し、ティタノサウルス類は骨の内部が詰まっているという、ユニークな特徴を持っていました。

2003年の衝撃:なぜ「疑問名」になってしまったのか

長きにわたり君臨してきたティタノサウルスですが、近年の研究でその地位は崩壊します。

科学的再検証による「疑問名」への転落

2003年、ウィルソンとアップチャーチの研究により、これまで「ティタノサウルス属」とされてきた標本のほぼ全てが「疑問名」あるいは「別属」であると判断されました。

再調査の結果、基準となる「T.インディクス」の化石には、種としての独自性を示す特徴がないことが判明。
これにより、ティタノサウルスという種自体が「事実上の分類不能」として扱われることになったのです。

別名を与えられたかつての同胞たち

この再編により、かつてティタノサウルスの一種とされていた恐竜たちは改名・独立していきました。

ネウケンサウルス

かつての「T.アウストラリス」や「T.ロブストゥス」(アルゼンチン産)

イシサウルス

かつての「T.コルバーチ」(インド産)

過去に「ティタノサウルスの他の部位が見つかった」とされた報告も、現在は全て「他の恐竜の骨だった」と断定されています。

消えた化石の謎と現在の地位

行方不明となった模式標本

ティタノサウルスの正当性を証明することが困難なもう一つの理由。
それは、19世紀に発見された貴重な「模式標本」が現在行方不明になっているという事実です。
現物が失われているため比較検討ができず、かつての名門恐竜は「存在そのものが疑問視される」苦しい立場に追いやられています。

名前だけが残る「幻の巨人」

現在、生物種としての「ティタノサウルス」という名前は有効性を失いつつあります。
しかし、分類群としての「ティタノサウルス類」という名称は現在も有効であり、このグループ全体を指す言葉として教科書や論文の中で生き続けています。

ティタノサウルスの実体は霧の中に消えようとしていますが、その名前は「恐竜研究の進化の歴史」を象徴するものとして残り続けているのです。

余談:特撮映画の「チタノザウルス」

特撮映画『メカゴジラの逆襲』には、「チタノザウルス」という名前の怪獣が登場します。
名前の響きは同じですが、海生爬虫類のような姿をしており、本種のティタノサウルスとは全く無関係の架空の存在です。
「巨人のトカゲ」という響きの良さが、クリエイターを魅了した一例と言えるでしょう。

ジュラシック・パーク/ジュラシック・ワールド Jurassic
Park / World
シリーズ登場恐竜

  • ジュラシック・ワールド/復活の大地 における活躍

    本作のティタノサウルスは、史上最大級の竜脚形類として描かれていますが、公称サイズと劇中の描写には興味深い「ズレ」が存在します。

    公称サイズ
    体長21.3m(70feet)・体高15.2m(50feet)・体重27トン超。

    劇中の描写
    体高以外は、公称数値を遥かに上回るような、シリーズ最大級の巨体に見えます。

    この矛盾については、『ジュラシック・パークⅢ』のブラキオサウルスのデータと同様の計測方法がとられている可能性があります。
    つまり、「首をもたげた状態の鼻先から尾までの長さ」を“体長”としている説です。
    もし、鼻先から尾までを一直線とする一般的な計測方法(全長)で計算した場合、そのサイズは30mを優に超えると推測され、あのブラキオサウルスをも凌ぐサイズとなります。

    デザイン面でも非常にユニークな特徴を持っています。

    ヒレ状のクレスト
    非常に長い尾に加え、首と尾の付け根には、折り畳むことのできるオレンジ色のヒレ状のクレストが生えています。
    この特徴から、ゴジラシリーズに登場した同名の「恐龍怪獣」を意識しているのではないかとの声も挙がっています。

    足元の毛
    足元をよく観察すると、ゾウのような短い毛が生えていることが確認できます。

    劇中では、背の高い草むらが生い茂る島の谷に多数生息しており、主人公一行の前に姿を現しました。
    その登場シーンは、映画『ジュラシック・パーク』1作目のブラキオサウルス登場シーンを彷彿とさせる演出となっています。

    圧倒的な巨体
    とてつもない巨体で一行の度肝を抜きました。

    ルーミス博士の涙
    とりわけルーミス博士はその雄大な姿に大興奮し、両手を広げ歓声を上げ、感極まって涙を流しました。

    音楽のオマージュ
    このシーンで流れるお馴染みのテーマ曲には、1作目と同じ旋律が使われており、シリーズファンの涙を誘う名場面となっています。

    「三大恐竜」のうち唯一の植物食恐竜であるティタノサウルスは、非常に穏やかな性質として描かれました。
    一行に危害を加えることはなく、いとも簡単にDNAを採取させてくれています。

    また、アニメーターによると、その動きはキリンや白鳥が参考にされたとのこと。
    劇中では、キリンなどをモチーフにした求愛行動を取っている二頭の様子も確認できます。

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