ハツェゴプテリクス Hatzegopteryx

名前の由来

ハツェグの翼

科名

アズダルコ科

分類

双弓亜綱、翼竜目

生息地(発見地)

ルーマニア

時代

約6600万年前(白亜紀後期)

全長

約11〜12m(翼幅)

解説

約6600万年前、白亜紀後期のルーマニアに、空飛ぶ巨大な怪物が君臨していました。
「ハツェグの翼」を意味する学名を持つ翼竜「ハツェゴプテリクス」です。

翼指竜亜目アズダルコ科に分類され、近縁種であるケツァルコアトルスと並んで史上最大級の飛翔生物として知られています。

「軽自動車サイズ」の頭部と規格外の巨体

ハツェゴプテリクスの最大の特徴は、その圧倒的なサイズとがっしりとした骨格にあります。

長さ3m超の巨大な頭骨

他の翼竜の頭骨が細長く薄いのに対し、ハツェゴプテリクスは長さが3mを超え、非常にがっしりとしていました。
これは「軽自動車1台分」にも匹敵する巨大で重い頭部を首の先に据えていたことを意味します。

太く短い首と重い体重

巨大な頭を支えるため、他のアズダルコ科に比べて頚椎(首の骨)が短く太い特徴がありました。
また、骨の中空度が低く身が詰まっていたため、同格の大きさであるケツァルコアトルスよりも体重ははるかに重かったと考えられています。

島の環境が生んだ「逆転の進化」

本来は空を飛ぶために軽量化されるはずの翼竜が、なぜここまで巨大で重厚な姿へと進化したのでしょうか。
その理由は生息環境にあります。

隔離された「ハツェグ島」

当時のヨーロッパは「テチス海」という浅い海に島々が点在しており、化石が発見されたルーマニアの「ハツェグ盆地」も当時は小さな島でした。

獲物は「小型化した恐竜」

この島に閉じ込められたマジャーロサウルスやテルマトサウルスなどの恐竜は、限られた食糧や環境に適応するため「島嶼性矮小化(とうしょせいわいしょうか)」を起こして小さくなっていました。
また、タラスコサウルスのような大型の肉食恐竜もおらず、小型の肉食恐竜しかいませんでした。

頂点捕食者への道

ハツェゴプテリクスはこの「強大な天敵がいない環境」で、現在のコモドオオトカゲやゾウガメのように巨大化し、小型化した恐竜たちを蹴散らして食らう「島の頂点捕食者」へと上り詰めたのです。

この重い巨体で「空を飛べた」のか?

高い骨密度や重い体重から、「空を飛べず地上を歩き回るだけだったのではないか」、あるいは「身軽な若齢個体の頃だけ敵から逃げるために飛び、成長すると飛ばなくなる」と考える研究者も存在します。

しかし一方で、「飛べたはずだ」とする強力な見解もあります。

島を渡るアイランドホッパー説

基礎代謝が非常に高い翼竜が、小さな島だけで巨体を維持するカロリーを摂取し続けるのは困難です。
現在のコモドオオトカゲが海を泳ぐように、餌を求めて島から島へと飛び回って移動していたと推測されています。

筋力による驚異の離陸

四肢には強靭な筋肉が発達しており、上昇気流や高台などを必要とせず、その筋力だけでほんの数秒で地上から飛び立つことができたとする説もあります(発見された骨密度が高かったのは一部の部位だけだったという意見もあります)。

キリンほどの背丈を持つ怪物が空を自由に舞っていたのか、それとも大地を歩く巨大な捕食者であったのか。
絶海の孤島で独自の進化を遂げたハツェゴプテリクスの真実は、完全に近い化石が見つかるまでハツェグの地層の中に眠っています。

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