ポラカントゥス Polacanthus

名前の由来

多くのトゲ

科名

ノドサウルス科

分類

双弓亜綱、鳥盤類、装盾類

生息地(発見地)

イギリス

時代

約1億3200万〜1億1200万年前(白亜紀前期)

全長

約3〜5m

食性

植物食

解説

白亜紀前期のヨーロッパに生息し、全身をトゲと装甲で武装していた中型の鎧竜「ポラカントゥス」。

肉食恐竜から身を守るための「完璧な防御形態」を持ちながら、研究者たちを悩ませ続ける「分類の謎」を持つ非常に興味深い存在です。

「多くのトゲ」を持つ恐竜の発見史

ポラカントゥスの化石は、1865年頃にイギリスの「ワイト島」で初めて発見されました。

不完全な化石からのスタート

発見者の一人である古生物学者のウィリアム・フォックスによって収集されましたが、当初見つかった化石は不完全な骨格であったため、分類に大変苦労しました。

トゲにちなんだ名前

その後1887年になり、ハリー・シーリー博士によって正式に命名されました。
ギリシャ語の「poly(多くの)」と「akantha(トゲ)」に由来し、全身に無数のトゲを備えていたことにちなんでいます。

完璧な防御機構「多数のスパイク」と「仙骨盾」

ポラカントゥスの外見における最大の特徴は、全身を覆う重武装です。

無数のトゲ(スパイク)

背中や肩、胴体の両側面にかけて、鋭利で大きなトゲが「対」になって大量に並んでいました。
尾にも小さなトゲが並んで生えており、隙のない武装を誇っていました。

鋭利で大きなトゲが大量に並んでいた

鋭利で大きなトゲが大量に並んでいた

巨大な装甲板「仙骨盾(せんこつじゅん)」

もう一つの大きな特徴が、腰の部分を覆う巨大な装甲板です。

腰の部分を覆う巨大な装甲板

腰の部分を覆う巨大な装甲板

小さな硬い骨の板が集まってできた1枚の大きな盾のようなもので、背骨とくっついた皮骨で構成されていました。
まるで亀の甲羅のように腰回りをしっかりと守っていたのです。

地面を掘る「曲がった爪」?

明確な化石の証拠はまだ発見されていませんが、足の指には「曲がった爪」を持っていたのではないかとする説もあります。
もし存在していれば、地面を掘って植物の根などを探して食べるのに役立っていたと考えられています。

亀のようにうずくまる「防御特化」の生存戦略

白亜紀前期のイギリスには、ネオヴェナトルやバリオニクスといった恐ろしい肉食恐竜(捕食者)が生息しており、植物食のポラカントゥスは彼らの標的になることもありました。

しかし、ポラカントゥスには尾の先のハンマーのような「自ら積極的に攻撃を仕掛ける武器」はありません。
そこで彼らがとったのが、スパイクと仙骨盾を活かした「完璧な防御戦術」です。

敵に襲われた際、彼らは逃げ回ったり反撃したりせず、亀のように地面にうずくまり、柔らかいお腹を隠して背中のトゲと装甲だけを敵に向けていたと推測されています。
肉食恐竜が手を出せずに諦めて立ち去るのをひたすらじっと待つという、徹底した防御戦術で激動の時代を生き抜きました。

研究者を悩ませる「分類の謎」

ポラカントゥスは、鎧竜の中でどのグループに分類されるべきか、現在でも議論が続いている珍しい恐竜です。

ハンマーがないからノドサウルス科?

鎧竜は大きく「尾にハンマーを持つアンキロサウルス科」と「ハンマーを持たないノドサウルス科」に分けられます。
ポラカントゥスはハンマー状の骨を持たないため、長らく典型的な「ノドサウルス科」に分類されてきました。

アンキロサウルスの特徴も併せ持つ

しかし骨格を詳しく観察すると、「前後に短く幅広い頭骨」など、アンキロサウルス科特有の特徴も併せ持っていることが判明したのです。

現在ではノドサウルス科の中の「ポラカントゥス亜科」に分類されることが多いですが、アンキロサウルス科に近いとする見解や、第三のグループ「ポラカントゥス科」として独立させるべきだと考える研究者もいます。
不完全な化石から始まった研究史は、鎧竜の進化の複雑さを物語る重要なピースとして、今もなお探求心を刺激し続けています。

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