オヴィラプトル Oviraptor

名前の由来

卵泥棒

科名

オヴィラプトル科

分類

双弓亜綱、竜盤類、獣脚類

生息地(発見地)

中国、モンゴル

時代

約8980万〜7060万年前(白亜紀後期)

全長

約1〜3m

体重

約25〜36kg

食性

雑食

解説

恐竜の研究史において、これほどまでに誤解され、長きにわたり不名誉な名前を背負わされ続けた恐竜は他にいないかもしれません。
その名は「オヴィラプトル」。

中生代白亜紀後期のモンゴルに生息していたこの小型獣脚類は、現在でこそ「慈愛あふれる教育熱心な親」として名誉を回復していますが、そこに至るまでには約60年にも及ぶ冤罪の歴史と、世紀の取り違えとも言える複雑な事情がありました。

奇妙な「鳥のような」恐竜の特徴

オヴィラプトルは、オヴィラプトロサウルス類を代表する恐竜であり、異彩を放つ存在でした。
全長は1~3m程度と小柄で、その姿は現在でいう鳥類、特にフラミンゴやオウムに似た特徴を数多く備えていました。

歯のないクチバシとユニークな頭部

彼らの最大の特徴は、その奇妙な顔つきです。
あごには歯が一本もなく、代わりにオウムのような形状をした強力なクチバシを持っていました。

上顎の突起

上顎の内部中央には、歯に似た鋭い2本の骨の突起が存在しました。
これを下顎と噛み合わせることで、硬いものを砕くのに非常に適した構造になっていました。

フラミンゴのような顎

顎の形状はしゃくれており、非常にユニークな横顔をしています。

トサカの謎

頭部には王冠のようなトサカがあったとされています。
しかし、このトサカについては、後述する「種族の取り違え」という大きな問題をはらんでいます。

鳥類に近い羽毛と生態

頭部以外にも、短い尾や発達した前肢など、現代の鳥類に通じる特徴を持っていました。
近縁種の化石研究からは、彼らが羽毛を持っていた可能性が高いことが示されており、現在の復元図では全身が羽毛で描かれることが一般的です。

「卵泥棒」という名の冤罪

学名オヴィラプトルは、ラテン語で「卵泥棒」という意味を持っています。
さらに、種小名の「フィロケラトプス(ケラトプスを愛する者)」は、当初「プロトケラトプスの卵を好んで食べる者」という意味で付けられた皮肉な名前です。

1920年代:状況証拠による「有罪判決」

1920年代、アメリカ自然史博物館によるモンゴルでの発掘調査において、本種が発見されました。
しかし、不幸だったのはその発見された「状況」でした。

化石は、当時モンゴルで繁栄していたプロトケラトプスの巣と卵と一緒に見つかったのです。
研究者たちは「この恐竜は、巣を襲い卵を盗んで食べようとしている最中に死んだに違いない」と推測。
1924年、この状況証拠のみで「卵泥棒(オヴィラプトル)」と命名され、長きにわたり狡猾な略奪者だと信じられてきました。

60年越しの名誉挽回

その汚名が晴らされる転機が訪れたのは、命名から約60年以上が経過した1990年代のことでした。

1993年:卵の中身は「自分の子」だった

1993年、それまで「プロトケラトプスのもの」だと思われていた卵の化石を詳しく調査したところ、驚くべき事実が判明しました。
その卵の中から、なんと「オヴィラプトル自身の胎児」の化石が発見されたのです。

かつてオヴィラプトルと一緒に見つかった卵は、盗もうとしていた獲物ではなく、彼ら自身の卵でした。

1995年:「慈愛の親」としての姿

さらに1995年には、近縁種であるシチパチが、前肢を広げて卵に覆いかぶさるような姿勢で発見されました。
彼らが化石になった瞬間、彼らは卵を盗んでいたのではなく、自分の産んだ卵を羽毛のついた腕で覆い、必死に温め守ろうとしていたのです。

彼らの正体は「泥棒」ではなく、マイアサウラのような「慈愛精神あふれる教育熱心な親」そのものでした。
この発見により、現在は子煩悩な恐竜としてその評判が広まっています。

変えられない名前と「国際命名規約」

研究の結果、疑いは完全に晴れました。
しかし、学術の世界には「国際命名規約」という厳格なルールが存在し、一度正式に付けられた学名は、由来が間違っていたからといって変更することはできません。

その結果、彼らは無実が証明された今もなお、公式には「卵泥棒」という不名誉な名前で呼ばれ続けるしかないのです。
種小名の「ケラトプスを愛する者」も、今となっては「濡れ衣を着せられた相手として縁が深い」という意味で皮肉な響きを残しています。

食性の謎と「貝泥棒」疑惑

卵を主食としていなかったとすれば、彼らは一体何を食べていたのでしょうか?

トカゲと木の実(雑食性説)

最も有力な証拠として、腹腔にトカゲの化石を伴った個体が見つかっています。
また、顎の構造が原始的な角竜に似ていることから、植物や硬い木の実などを食べる雑食性だったとする考えが根強く支持されています。

否定された「貝泥棒」説

かつては、特徴的なクチバシで「二枚貝などをこじ開けて食べていた」という説もあり、近縁種には『コンコラプトル(貝泥棒)』という名前まで付けられました。
しかし、オヴィラプトルの頭骨は空隙が多く、貝をこじ開ける圧力には耐えられないことが判明し、現在この説は否定的です。

オヴィラプトルの「正体」:実は「シチパチ」だった?

物語にはまだ続きがあります。
私たちが図鑑や博物館でよく目にする、立派なトサカを持ち、巣の上で卵を抱いているあの有名な姿。
実は、厳密にはオヴィラプトルではない可能性が高いのです。

ホロタイプ標本の限界

最初に「オヴィラプトル」と名付けられた標本(ホロタイプ)は頭骨が潰れており、保存状態が良くありませんでした。
近年の研究では、本物のオヴィラプトルには特徴的な「立派なトサカ」が無かった可能性が高いとされています。

図鑑の姿は「シチパチ」

一方、卵を抱いた姿で見つかった保存状態の良い化石は、その後の研究でシチパチという別の属名が与えられました。
つまり、私たちがイメージする「卵を温めるオヴィラプトル」の姿は、そのほとんどが近縁種のシチパチなのです。
本物のオヴィラプトルの正確な顔つきは、未だ謎に包まれています。

まとめ

「卵泥棒」の濡れ衣を着せられ、名誉挽回したかと思えば、有名な姿さえも「実は別種」であったことが判明する。
オヴィラプトルは、多くの誤解と謎を含んだ「不憫」でありながらも魅力的な恐竜です。

名前は変えられずとも、彼らが過酷な環境で子孫を残そうと奮闘していた事実は変わりません。
その真実は、恐竜研究の難しさと面白さを私たちに教えてくれています。

ジュラシック・パーク/ジュラシック・ワールド Jurassic
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  • ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 における活躍

    先行して上映された「冒頭5分の映像」や、映画の導入部にあたるプロローグ(先史時代の光景)において、その生態が描かれていました。

    そこには、学名の由来通りに他の恐竜の卵を漁り、食べている姿があり、まさに「卵泥棒」としてのキャラクター性が強調された演出となっていました。

    実は、オヴィラプトルは現代パートでも復活を遂げていました。
    しかし、紆余曲折の末、公開版の映像からはその出番が丸々カットされてしまいました。

    その理由は、現代での登場シーンが「閲覧注意レベル」にエグすぎたためです。
    そのため現在、現代に蘇ったオヴィラプトルの姿を確認できるのは、未公開映像もしくはブルーレイ等に収録されているエクステンデッド版のみという扱いになっています。

    では、その「エグすぎるシーン」とはどのようなものだったのでしょうか。
    それは、同じく映画初デビューとなるリストロサウルスとの対決シーンです。

    舞台はマルタ島の闇市。
    見世物として戦わされた両者でしたが、戦いの結末は凄惨なものでした。
    最終的にオヴィラプトルは、リストロサウルスに首を噛み千切られるという衝撃的な敗北を喫します。
    この描写があまりに残酷であったため、劇場版ではカットの対象となりました。

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